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再会


───カレントタウン
サンヨウシティからシッポウシティの中間にあるまあどこにでもありそうな普通の町。ポケモンと散歩を楽しむ者やショーウィンドウを眺める者…そんな中で一人突っ走る仲間を追いかける三人組。

「、ちょっと…バトルグラブって…さ、何時までとかって制限あるわけじゃないんでしょ!?」



なんでこんな走んなきゃいけないの!!?と息をあげながら愚痴を漏らす様は些か迫力があった。
その声に「まあまあ、」と宥めるデント、「サトシってば本っっ当に子どもねえ!!」と同意するアイリス。

やっとポケモンバトルグラブにたどり着いた時にはやる気満々で相手を探すサトシとは対照的に私たちはクタクタだった
「やっと追いついたよ…」


はい、鞄持つよ?とアイリスや私に手を差し伸べるデント、こういった心遣いができる辺り紳士的だよなと思う。私はウエストに着けるタイプのバックなのでそんなに重いわけではないがせっかくの厚意だ、甘えるとした。

「ポケモンバトルグラブは逃げたりしないのにあんなに走るなんて、子どもねえ〜」
「あああああああ!!」

熱心に探すよねー…と未だに息を整えていたらサトシがいきなり大声をあげた。なんだというのか



(この子…)
パソコンの画面に目を向ければそこにはイッシュに来て間もない頃に会い、また会った時にはバトルしてくださいと言っていた名前も知らない少年がいた。

今更ながら名前をあの時に聞くのを忘れてた、とか思いだし画面に映る彼の名前を頭に刻んだ。



「シューティ…?」
「本当だ、この町に来てたんだ」
デントが知っているとなるとサトシや私がサンヨウに挑戦する前にバッジをゲットしたことになる
「ちょっと!2人で話を進めないでよ、誰なのこの子?」
「アララギ博士の所で出会ったトレーナーさ。オレがイッシュ地方に来て初めてポケモンバトルをした奴だ


決めたぞ!!シューティともう一度バトルだ!!」

「ウム、了解した!!
バトルのことならなんでもお任せ、ポケモンバトルグラブへようこそ。シューティ君とのバトルを希望だね?君の名は?」


いきなり出てくるのは反則ではないのか、巨体のゴツい男はドン・ジョージというらしい。ジョーイさんと同じく壁に張られてある写真を見て苦笑いをせざるを得なかった。ゴツい男が13人…これはキツい…

「では、シューティ君を呼び出そう。ライブキャスターに連絡するぞ」
「ライブキャスター?」
ライブキャスターとはポケギアみたいな多機能ではないシンプルな携帯テレビ電話という物だった。

(写真撮れない点ではポケギアの方が私には合ってるかな、)
なんて思ってるうちにシューティに繋がったようだ。デントやアイリスが自己紹介をしている。しまった、完全に出遅れた。まあどっちみちサトシとバトルするだろう。後で会った時に軽く挨拶をすればいいかと思いきや、なにやら雲行きが怪しい。サトシがパソコンを揺らしながらシューティと言い争いをしているようだった。しかしその中で気になる単語がひとつ。


「ゼクロムって?」
「ゼクロムといえば…あの伝説と呼ばれしポケモンの?」
あれ、質問したのに答えになってないぞ?

「イッシュ神話に纏わる伝説のドラゴンポケモンだよ。会ってるんだって、カノコタウンで。」


さすがアイリス、ドラゴンポケモンには詳しいんだな


ヒートアップしてきたサトシの様子にジョージさんが止めに入った
「全く騒がしいねえ。」


今までパソコンから一歩離れて聞いていた声がバトルグラブの内部に響き渡った。本人がきたようだ

「その大声、向こうの通りまで聞こえているよ」
大声を辿ってバトルグラブに来たのか、シューティ。

だがそんなことはお構い無しでバトルしようとせがむサトシ。しかしシューティは6対6のフルバトルなら自分にとって意味があると言う。

サトシはいまの時点で手持ちは5体。フルバトルは無理だ


「でもほら、バッジなら一個ゲットしてるぜ」
しかしそんなサトシをシューティは鼻で笑う。自分は二個目をゲットした、そんなの基本だろう、と。

少し人を見下しすぎではないだろうか
極めつけはバトルの申し込みを取り消し、カントーのトレーナーを小バカにするというものだった。一応私もカントー出身なんだけどなー…


シューティがバトルグラブを出ようという時にアイリスが放った一言が彼の足を止めた
「いいじゃない、バトルくらいしてあげても
なんだかさっきからゴチャゴチャ言ってるけど、大体そういうタイプって子どもなのよね〜」
「こども…?」


(アイリスって相手に火をつけるのうまいよなー…)
「僕も見てみたいな、君達2人のバトルを。情熱と冷静さがぶつかり合い、清々しくも刺激ある──奥深い味が醸し出される。そんなバトルを期待しているんだけどね。」

デントには珍しく少し挑発的だな、と思いつつ私も続ける

「そうそう。それにさ、あんたはまだポケモン連れて旅を始めたばっかのトレーナーだよ?相手を限定せずに色んなバトルや経験を積んだ方がいいと思うけど?」



そう言ってジョージさんの背後から姿を現す。シューティの目が見開かれた。

「ハンナさん!?いつからそこに?
…というより、なんでサトシ達と!?」


「最初から。サトシとは前に会ったことがあるからそのよしみでね。それにしても随分偉くなったもんだねえ、あたしと会った時はまだポケモンすら持ってなかったってのに。バッジを二個持ったからってもうベテラン気取り?」
少し言い過ぎたかもしれない、シューティは黙ってしまった。
アイリスは容赦ないなといった目で見てきた。私は思ったことを言ったまでだ。



「…ジョージさん、度々すみません。審判をお願いします。僕とサトシの5対5のバトルです。ハンナさん、あの時の約束、覚えてますよね」

「うん、もちろん」
あの真っ直ぐな目が印象的だったから


「サトシとのバトルが終わったら僕とバトルしてください。」

もっと強くなってからしたかったんだけどなあ…だがこれも経験のひとつだ。



「…いいよ。」



バトルグラブとだけあって本格的な施設だった。まずはサトシとシューティのバトル。私達はギャラリーから観戦することにした。
「そういえばハンナってシューティ君を知ってたんだね。」

いつ会ったんだい?
デントの質問にアイリスも気になると言った。
「イッシュに来てアララギ研究所で会ったの、その日にシューティはポケモンをもらいに来てたんだよ。」


「へぇ〜」
「でも最初は新人トレーナーらしい奴だなと思ったけどまさかあんな性格だとは思わなかったかなー。」


口をへの字にして「カントーバカにすんなし」とぼやけばアイリスとデントがクスクスと笑った、バトルはもうすぐ始まろうとしていた。
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