4人旅
今朝は私にしては珍しく理想的な目覚めだった。
マメパト達のさえずりで目を覚まし、鏡を見て寝癖をさっさと直し、いつもの服に着替えて、手持ちの子達の状態をチェックし、ボールを腰に装着して、軽く朝食をすませ、なんとなく外に出て歩きたい気分だったからそのまま軽い荷物を持ってポケモンセンターをあとにした。
(普段はこんな気持ちよく朝を過ごせないんだけど)
昔からそうだった。私は激しく朝に弱いのだ。
アラームは無視、ひどいときはボールから勝手に出てきたリザードンが優しくとは程遠い過激な朝を迎えさせてくれる。
(そうだ、サンヨウシティを出る前にポッド達の電話番号聞こう)
いきなり遊びにこられても困るだろうし。ジムからは少し逆の位置にいたが別に時間を気にするような旅ではないため、歩く速度は変わらぬままジムに向かって足を進めた。
ジムまであと少し、見覚えのある後ろ姿が目に入った。
「アイリスー!」
髪に引っ付いてるキバゴが気づいて振り向くと、それにつられてアイリスもこちらに気づいた。
「?…あ、ハンナさん昨日ぶり!」
こっちに気づくなりキバゴを肩に乗せたアイリスは駆け寄ってきた。
「ハンナさん朝早いんですね!もう次の町に行くんですか?」
「ううん、ちょっとジムに寄ってから次の町に行こうと思って」
「そうなんだ…あれサトシとデント?なんであんなところに?」
え?とアイリスが指した方向には向かいの歩道にサトシと背中に鞄を背負ったデントさんが歩いていた。
「ハンナさん、ちょっとサトシ達を驚かせてきますね!」
「ほどほどにね〜」
アイリスは小走りで、私はさっきと変わらず歩いてサトシ達のいる歩道に向かった。
ポッドとコーン達のいるサンヨウジムをあとにしたデントは、ポケモンソムリエを極めるためにサトシと一緒に旅をすることになった。
「デントはどこに行くの?」
「サトシの行くところ。君と一緒に旅をしたいんだ。まだ質問にも答えてもらってないしね」
「ええー?」
「君となら、色んなテイストに満ちた旅になりそうだからね」
「わかった!じゃあ一緒に行こうぜ!」
「と、なると次のジムは…」
デントはタウンマップを取り出し次に目指す町はシッポウシティだと示した。
「ところでアイリスとハンナさんは?」
「え、さぁ…」
「んばあ!」
「うおおおおお!?あ、アイリス!?」
サトシの背後の街路樹に、急に逆さまになったアイリスがぶら下がって現れた。
ドッキリは成功したみたいだ。あれは誰だって驚くに決まっている。
「アイリスは木を登るのが早いね〜…」
「ハンナさん!…ねえ、4人で一緒に行こうよ!僕的にはこの4人、すごくいい感じに思えるんだ」
「一緒に、それもいいかもな!」
デントの提案にサトシは賛成のようだ。
「今までずっとリザードン達と私の旅だったから…それ私も賛成」
「へ、なんで勝手に決めるかな?」
アイリスは言葉と違って嫌そうな顔はしていない。
「いいじゃん!皆で夢を叶えようぜ!オレはポケモンマスター、デントは世界一のポケモンソムリエ、アイリスとハンナさんは…あれ、なんだっけ?」
サトシの言葉に私とアイリスは顔を見合せクスッと笑った
「なーいしょ!」
そう言ってアイリス先に走って行ってしまった。
今度は私とデント、サトシが顔を見合せクスッと一笑してアイリスを追った。
「ハンナさんは?」
「んー…、具体的にはまだ決まってないかな。旅をしながらじっくり決めようと思ってる。焦って見つけることはないしね、ポケモンのことや進化についてももっと知りたいし!」
「そっか、見つかるといいな!…あっハンナさんバトルの約束!!」
「そういやポケモンセンターでしたなあ…でも、今言う!?」
初めての4人旅、1人とは違う感覚に胸を躍らせて駆けていった。
という転機から数日…サトシ達一行はシッポウシティへ向かう森の中を進んでいた。
「あっ、しまった!!」
(サトシ達の旅の誘いについ忘れてた)
上記の出来事を振り返っていたら大事なことを思い出した
「デント、サンヨウジムの番号教えて…」
ポッド達の番号聞くのを忘れてた。