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ピンクの光




 無事サンヨウジムでのジム戦で勝利を納めたハンナとサトシは、トライバッジを手に入れ、手持ちのポケモン達を回復させるためたわい無い話をしつつポケモンセンターへと向かっていた。


「じゃあサトシはママさんとオーキド博士とイッシュに旅行で来てたんだ。オーキド博士、最近会ってないけど博士は元気?でもまあイッシュに旅行しに来るぐらいだから元気か」
「うん、オレとママを迎えに来た時なんてパイナップル柄のシャツ着てきたくらいの気合いのいれっぷりだったんだ!」

  (パイナップル…!?)
 …シゲルが見たら一体どんな反応を示すのか。
 確かにタレント業も兼業してるオーキド博士のことだから、多少チョイスが派手な方かもしれないが、浮かれっぷりが眼に浮かぶ。


 とか考えているうちにポケモンセンターに着いた。
 思えばイッシュに着いてから初めてのポケモンセンターだ。私の中ではカントーやシンオウ、その他にも回った地方には顔が全く一緒のジョーイさんが一般的だ。ジュンサーさんといい遺伝子すごすぎではないだろうか。やっぱりイッシュでもいつものジョーイさんなのか。
 トレーにジム戦で頑張った3匹のボールを入れたまではよかった。

「お願いしまーす!」
「はーい」


 予想と反して、今まで見てきたジョーイさんとはまた違うかわいい雰囲気のジョーイさんが出てきた。少し違うが、同じような濃いもも色の髪はジョーイ一族そのものだ。

「あ!カラクサタウンでお会いしましたよね?」
「えっそうなの?」
「え?ああ、彼女はね、私のすぐ下の妹よ。ほら」

 ジョーイさんがひとつの写真立てを見せてくれたが、その写真には目の前にいるジョーイさんがなんと14人もいた。


「この子がカラクサタウンのジョーイ。で、こっちが私」
 正直説明されても皆顔が同じだからわからない。
「ハハッ…やっぱりみんなそっくりなんだ」
 これにはさすがのサトシも苦笑いを見せた。

「よろしくね」
 ピカチュウは全く気にしてはいないようだ。片手を挙げてジョーイに笑いかけた。
「珍しいわねピカチュウなんて、今日はジム戦?」
「終わりました。彼ら強いんですよ」

 突如降ってきた聞き覚えのある声、私達の後ろには先程戦ったジムリーダー、デントがいた。



「あれ…デント」
「デントさんも回復しに?」
「いや、ちょっと君たちと話がしたくてね。とりあえず立ち話はなんだし回復が終わるまでどこかに座らない?」

「そうだね」

 <ピピピピピピ…>

「…ハンナさんのポケギアじゃないかな?」
「あ、本当だ。ごめんちょっと待っててね」







 電話の相手はナナカマド博士だった。

「もしもし博士?」
『おおハンナ君か、少し君に頼みたいことがあるんだが…今ポケモンセンターにいるかね?』
「はい、ちょうどポケモン達を回復させてるところです」
『ならよかった。度々すまないが、そっちの地方にマコモ博士というサンヨウシティに拠点を持つ博士がおってな。渡してもらいたい資料のデータが入ったチップを今からそっちに転送するんで届けてくれんか?』
「いいですけど、直接転送はできなかったんですか?」
『マコモ博士側の容量の問題でできないみたいでな。それにマコモ博士はポケモンの不思議な力について研究しているから、ハンナ君はポケモンの進化について興味があるなら話を聞いてみるのもいい経験になるんじゃないかね』

 私がシンオウでナナカマド博士の手伝いをしていた理由。
 「進化に興味があった」というシンプルな理由だ。ナナカマド博士は助手として手伝いをさせてくれた。博士の元で色々な経験を積んだため、知識の量は一般よりはある。

 それでもやっぱり、シゲルには負けるけど。


「わかりました。ジム戦も終わったし話を聞けるならちょうどいいかもしれませんね!あ、転送機の起動しましたんで転送してもいいですよ!」
『うむ。よろしく頼むぞ』
 転送機が点滅を開始すると、博士が言っていたチップと、博士が直筆で書いたらしい研究所までの大まかな地図があった。
 サトシやデントには悪いが届けるのが先だな、私はサトシ達の所へ足を運んだ。


「ごめん2人とも、ちょっと用ができちゃったから話はまた今度でいいかな」
「ええ!?ハンナさんもう行っちゃうの?」
「仕方がないよサトシ。またサンヨウジムに遊びにお出でよ、ポッドとコーンも喜ぶからさ」
「うん!また会うときのためにポケモンも鍛えとかないとね。サトシ、ごめんね。次会ったらたくさん話をしようよ」
「わかった!そうだ、次会ったらバトルしようぜ!」
「いいよ、手加減はしないからね。じゃあ私行くわ!また今度」

 サトシ達と別れたら、ちょうどポケモン達の回復が終わったとジョーイさんのアナウンスが入った。受け取ったボールを腰に付けて地図を見る。リザードンに乗っていけば速いだろう。
 足早にポケモンセンターの入り口へ向かい外へ出た。


 だが外へ出たはいいものの、ピンクの光が雪みたいに降っていた。慌てて入り口の屋根に避難して試しに自分の手で触ってみたが、なんともなかったためそのままリザードンを出した。

「リザードン、地図を見て」


 リザードンは所謂バトル狂だがなかなか賢い面がある。



「今はこのポケモンセンターにいるから、地図でいうこっちの方角にあるこの研究所に向かいたいんだけど、連れてってもらえるかな?」
 地図と私が指差した方向を見て頷いた。
 さっそくリザードンに跨がって5m近く上昇した時だった。


 突然、ガクンと上昇が止まった。


「えっ!?」
 いきなり揺れたと思ったら、どんどん落ちていくではないか。

「えええ!?ちょっと、ちょっとちょっとリザードンさん!?」




 そのまま落下が止まることなく、リザードンとハンナは重力に従って地面と衝突してしまった。

「いった…っ、ちょっ…リザードンどうしたの!?」


 (まさか病気でもなった!?)
 リザードンが墜落した衝撃で自分も地面に一緒にダイブした。
 膝を打ったが幸いたいしたことはない、痛む膝を押さえてリザードンに近よった。

「え…、寝てる?」
 近頃激しいバトルや遠距離の空を飛ぶなんかしたっけ?と最近の出来事を思い返してたら、突如リザードンの体がピンク色に光りだした。


「まさかこのピンクの光が…!?」

 完全に迂闊だった。
 人が大丈夫だからポケモンも大丈夫って訳じゃないのに。急いでジョーイさんを呼ぼうと立ち上がった時だった。


「ハンナさん!?」


 慌てた様子のアイリスがやってきた。
 走っていたアイリスは止まると地面に横たわるリザードンを見て言った。
「そのリザードンも…私のキバゴもこのピンクの光のせいで眠っちゃったの!!」
「キバゴも!?」

 確かにキバゴもリザードンと同じように寝ている。
 そして、リザードンと同じくピンク色の光を纏っている。

「ジョーイさん!」
 とりあえずリザードンをボールに戻してアイリスとポケモンセンターに引き返した。
 カウンターにはさっきまで一緒にいたサトシやデント、ジョーイさんとピンクのポケモンがいた。

「アイリス、それにハンナさん!あれ?用事は…」
「今はそれどころじゃないの!ジョーイさん私のリザードンとアイリスのキバゴが…」
「変なピンクの光を浴びて急にこうなっちゃったんです」
「リザードンも同じです」
 私はリザードンをボールから出したがやっぱり眠ったままだ。

「ピンクの光…?」
「なんだがわかんないけど外にいっぱい飛んでるのよ」
 アイリスの言葉を聞いてサトシ達は視線を入り口へ向けた。
 ちょうどその時、長い黒髪を揺らして白衣を着た女性がポケモンセンターへ走り込んできた。隣にはピンクの丸いポケモンが浮かんでいる。

 女性はこっちにくるなりピンクの丸いポケモンに言う。
「ムンナ、キバゴとリザードンを起こしてあげて」
 ムンナと呼ばれるポケモンはまずキバゴに向かいピンクの光を口に取り込み始めた。
「これはゆめくい…?」
 私はアララギ博士からもらった図鑑を開いた。

『ムンナ。ゆめくいポケモン。
人やポケモンの夢を食べた後、体から出す煙にその夢を映し出すことができる』

「ハンナさんも図鑑持ってるんだ!」
「アララギ博士からもらったの」
 サトシのとは色違いだった。
 ムンナがキバゴの夢を食べ終わったらしい。おでこの穴からピンクの煙が出てきてキバゴの夢が映し出された。
 キバゴが草原のなかで楽しそうに走っている。

「これは…」
「キバゴが見ていた夢よ」

 ムンナ夢を吸い終わってしばらくすると、キバゴが夢から覚めて目を開けた。

「キバゴ!」
 アイリスがキバゴをきつく抱きしめる。

 再び夢の煙に視線を戻すとキバゴがオノンドに、更にオノノクスに進化していった。



「自分が進化する夢を見てたのね…」
「次はそちらのリザードンね。ムンナ、お願い」

 リザードンもキバゴと同じようにピンクの光が取り込まれていく。自分の相棒の夢が見れるとなったらなんか緊張してきた。
 するとムンナから出された煙に懐かしいリザードンの前の姿のリザードが映し出された。


「これってハンナさんのリザードですよね!…ってことはリザードンの過去?」
「あれは火炎放射…?にしてはなんか違和感があるな…変な方向にいってるし。あ、リザードンに進化した!!」
「ん?でも技にキレがないっていうか…僕が見た時のような迫力が見当たらない…?」

「おまえさんら言いたい放題だね。この夢は全部今までのリザードンだよ。なかなか育てがいのある子でさ、進化したらで前の体格の癖が治らなかったり、さっき見た火炎放射然り、技の修得に苦労したんだよ。で、今のリザードン」


 懐かしんでいるとリザードンが夢から覚めた。
「よく寝れた?」と問いかけるとよくわからない顔をしてリザードンは顔を傾けた。

「じゃあそのリザードンはよく熟成されたポケモンなんだね、そこまで逞しいのも納得だよ」
「ありがとうデントさん。そう言ってもらえると嬉しいよ」
「そ、そうかい?」
 自分のポケモンが褒められるのはトレーナーとして誰だって嬉しい。笑顔でお礼を言えばデントがそっぽを向いてしまった。



 そして改めて、ムンナを連れて現れた女性が自己紹介を始めた。
  

「皆さん初めまして。私はポケモンの不思議な力を研究しております。夢見る乙女、マコモ博士と申します」



 さっきの目的の人が目の前にいました。
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