「例えばさ、俺が何処かに行ったら隊長はどうする?」
クルルはケロロの膝にもたれながら聞いた。
「・・・何処か行く予定でもあるんでありますか?」
少し訝しむ様にケロロは聞く。
クルルはそれに首を振って言った。
「いんや、ただどうすんのか気になっただけ」
本当に気になっただけなのだろうか、クルルはあっけらかんとしていた。
例えばの話としてなぁ、とクルルは続ける。
「いきなりさ、俺が隊長の前から消えて、そのまま帰って来なかったら隊長はどうすんだ?俺という存在を忘れる?」
俺が逃がせてくれる?
クルルはただ普通の事の様に言う。
ケロロはそんなクルルを強めに抱きしめ、クルルの肩に顎を乗せて笑った。
「捜し出すよ」
クルルの耳元に、ケロロの声が直接入る。
「何がなんでも捜し出して、無理矢理にでも連れて帰る。例えクルルが我輩から逃げ出しても、我輩は何処までも追いかけて見つけ出すよ」
それは呪詛の様に。縛り付ける鎖の様に。
そして、優しく言った。
「クルルの居場所は我輩の横だから」
クルルだってそうするでしょ?
ケロロは笑いながら聞いた。
クルルは答える代わりに身体をケロロの方に向け、抱き着いた。
ケロロを感じる様に。ケロロの全てを確かめる様に。
たまに辛くなるのだ。ケロロの優しさに、自分の本音が掻き乱されるのが。自分が酷く卑屈だと分かる時が。
だけど、自分がケロロに依存しているのも知っている。大丈夫だと言われれば、楽になるのも分かっている。
つまり、優しさに縛られているのだ。
クルルは泣きそうな顔で笑った。
眩暈シャタル
結局、逃げ出す事も出来はしない。