「どこがいいの?」

毎回聞かれること。
恋人の評判はイマイチらしい。






「どこがいいって言われても・・・」

どこがいいのだろう。
そりゃあ、クルルの事は大好きだ。もういっそ愛してるといっても過言ではない。世界の中心で愛を叫びたいくらいだ。
でも、どこがいいと言われると考えてしまう。
顔はモロストライクど真ん中。性格は少々捻くれていて我が儘だが、可愛さもありいいと思う。声も良い、感度もそれなりに。なにより自分を好いてくれていると分かる。いわばクルル全部が好きだ。
だけど、それは付き合っていくにつれて分かったこと。
自分は何故クルルを好きになったのだろう、それが思い出せない。

「クルルはさぁ、何で我輩と付き合おうって思ったの?」

薄暗いラボの中でパソコンに向かっているクルルに問いかける。
ケロロはただクルルの背中を見つめていた。きっとこの場に幼馴染の赤がいたら働けと怒られていただろう。ケロロは随分の間クルルの背中を見ながら考えていて、そしていきなり問いかけた。

「いきなり何言い出すんだぁ?隊長〜」

クックッ、と笑いながらクルルは言った。

「いやぁ、クルルは我輩のどこがいいのかと思って」

ケロロも笑いながら言う。
我ながら馬鹿な質問をしていると分かっている。だが、やはり気になるのだ。
期待半分、クルルが真面目に答える訳がないという諦め半分で待つ。

「そうだなぁ、」

意外にも、真面目に答えてくれたことに驚いた。

「隊長〜、声ちょびっと震えてたぜぇ?」

そんな真剣に聞かれたら、ちゃんと答えなきゃだろ?
クルルはそう言って笑った。

「今までにないタイプだったからかねぇ」

笑いながら、クルルは答えた。
面白いし、何をしだすか分からないから退屈しない。顔も嫌いじゃないし、夜も相性が良い。自分を変に甘やかさないし、無理に守ろうとしない。気も使わないし、一緒にいて楽だから、

「かねぇ」

そう言ったクルルに、ケロロは恥ずかしさと嬉しさを感じた。だっていつも好きとか言ってくれないクルルが、今正に好きだって言ってくれたんだもん!

「あ、ありがとうであります・・・」

「クーックック、どういたしまして〜」

固まった頭でなんとかクルルにお礼を言ったら、クルルは楽しそうに笑った。

「てかさ、やっぱりクルルでもそれなりに付き合ってた過去があるんでありますな・・・」

「もうこの歳だぜぇ?あるに決まってるだろ」

「そうでありますか・・・」

クルルの昔の恋人。
気になる、すごく気になる。クルルが付き合ってたことはあるとは思っていたが、今まで聞いたことはなかった。やっぱり大人な人と付き合っていたのだろうか、それとも可愛い系?

「あの、クルル・・・、どんな人と付き合ってたの?」

気になるから、思い切って聞いてみた。

「ん?なんだ隊長〜、気になるのかい?」

「そりゃあ、まあ、」

恋人のことだし?

「クックッ、しょうがねぇ。特別に教えてやるぜぇ」

なんだか今日はクルルの気分が良いらしい。いつもなら、絶対にしない話だ。

「初めての奴はなんか無駄に大人ぶった奴でなぁ、まぁ俺がまだガキだったってのもあるけど妙に腹の立つ奴でねぇ。いつも澄ましてて要領が良くて頭も良い、ムカつくブラコン野郎だったぜぇ?」

その後は男女ぼちぼちってとこか。
そう言いながらクルルは懐かしそうに笑う。
ケロロは聞きながら、気分が少し落ちていくのが分かった。
クルルの初めての相手は、やはり自分とは違う大人な人で。
初めて知った恋人の過去に嬉しさよりも嫉妬した。

だって、それは自分しか知らないはずのクルルを知っているということ。
クルルの『初めて』を自分じゃなくて、その人が貰えたということ。
自分が欲しかったそれを手に入れ、別れてもなおクルルを笑わせることが出来るなんて。

「・・・なんか許せないであります」

クルルに抱き着きながら、ケロロは呟いた。

「隊長〜、自分から聞いといて嫉妬かい?」

ケロロの腕の中で、クルルはいつもの様ににやにや笑う。

「だってクルルの全てを知ってるのは我輩だけでいいの!クルルを笑顔にさせるのは我輩の役目なの!」

なのに、なのに!昔の恋人の話で笑うなんて!

「嫌であります!」

そうクルルを抱きしめながら叫ぶケロロに、クルルは笑う。

「ホント、意味分かんねぇぜぇ」

クルルはケロロに目を合わせたまま笑った。

「だけど、ホント退屈しねぇ」

その笑顔がいつものにやにや笑いじゃなくて。
その笑顔を見て、思い出した。

この笑顔に惚れたんだ。

顔が良いとか可愛いとか、そんなことじゃなかった。もっと単純なことだった。
いつもにやにや笑うクルルのいつもとは違う、この笑顔を見た時クルルを好きになっていたんだ。

「簡単な答えだったでありますな・・・」

「は?何が?」

「いやいや、コッチの話〜」

簡単過ぎて見失っていた。肝心なことに気付かないで、馬鹿みたいに悩んで。

「ホント、我輩ってどうしようもないであります」

小さい声で呟いた声は、クルルには聞こえなかったらしい。クルルはただケロロに静かに抱かれていた。
そんなクルルにケロロは思う。
クルルの顔よりも性格より、声が良い夜の相性が良いなんかより、この笑顔が好きだ。
だからクルル、

「大好きだよ、クルル」

笑って?
耳元で囁いてキスをすると、クルルは笑った。






勇敢エゴイズム



評判はイマイチでも、我輩にとっては最高の恋人。



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