「ねぇクルル、我輩愛の告白を考えたんだけど聞いてほしいであります!」

ケロロはいきなりそう叫んだ。
それにケロロの背中にもたれ掛かっていたクルルはビクリ、と驚く。

「・・・いきなり叫ぶなよ、驚くだろ〜」

「あ、それは申し訳ない。じゃなくて!」

「あ?」

「告白!我輩の!聞いてくれるんでありますか!?」

「あぁ、そんな事言ってたな」

大体、なんで告白なんてしようと思い立ったのだろう。
今クルルとケロロは、相手の背中にもたれ合いながら自分の趣味に没頭していたはずだ。つまり、クルルはパソコンを、ケロロはガンプラを。

「いや〜、ガンプラ作りながらクルルを惚れ直させるにはどうしたらいいか考えてたんでありますよ」

「もう無理じゃね?」

「ゲロッ?!いやいやいや、我輩の愛溢れる告白を聞けばバッチリであります!」

「ふ〜ん。じゃあ聞いてやるぜぇ」

二人して趣味の為動かせている手を止めずに話す。これではケロロの告白の真剣味が足りねぇなぁ、とクルルは思ったが、ケロロはやはり手を止めずに「それでは・・・」と言った。

「『世界中が敵になっても、我輩はクルルを愛しているであります』」

「・・・・・・」

世界が、止まった気がした。

「どうでありますか!?惚れ直した?惚れ直した?」

「・・・・・・キモいぜぇ」

つい出た本音に、ケロロはショックを受けたらしい。我輩頑張って考えたのに、と嘆いていた。

「じゃあ次であります!」

「まだあるのかよ・・・」

ああいうのはゴメンだぜぇ、とクルルは笑った。

「大丈夫であります!絶対クルルのハートをゲットしてみせるであります!」

無駄にやる気のあるケロロに、クルルは笑った。

「『世界で一番愛してるぜ』」

「ありきたりだなぁ」

「『君は僕の女神さ』」

「俺は男だぜ〜?」

「『クルルは我輩が一生守る!』」

「夏美に負けるのにか?」

「『クルルが我輩の翼だ!』」

「飛ばねぇだろ」

「『僕にはまだ帰れる場所があるんだ・・・』」

「ある意味名台詞だよなぁ」

「『我輩の鞘はクルルだったのでありますな』」

「隊長剣だったのかい?」

「『我輩とクルルは運命の赤い糸で結ばれているんであります』」

「俺、強制されるの好きじゃねぇんだよ〜」

「じゃあ『前世での約束』?」

「前世なんて信じられねぇなぁ」

「『君の瞳に乾杯☆』」

「うざいし古い」

「あー!分からないであります!」

遂にケロロは放り出した。
分からない、分からないであります。我輩の持てる技全てを出したのに!

「クルルのばか!」

「惚れ直させるのに、逆に俺に嫌われたいのかい?」

クーックック、と笑うクルルに、ケロロは少し腹が立った。

「だって我輩の告白全部駄目出ししてぇ!」

「全部微妙だったからしょうがねぇだろ」

くさいし、何処かで聞いたことのある台詞ばっかりじゃなぁ。
そう言っているクルルは少し不機嫌になっていた。
確かにケロロから告白される事は嬉しい。だけど一番聞きたい台詞が聞けない。あんなに気取った気障ったらしい台詞なんて要らないのに。もっとシンプルで、まっすぐ単刀直入な・・・

「大好きであります」

『好き』だけでいいのに。

「クヒッ・・・・・・!」

変な声が出た。
今クルルが言って欲しいと考えてた台詞を、今ケロロが言った。・・・運がいいというか、なんと言うか。

「やっぱり我輩シンプルなものが好きであります!」

クルルもときめいてくれたみたいだしぃ。
そう言って笑うケロロは、嬉しそうだった。

「・・・誰がときめくかよ」

「またまたぁ、変な声出したくせに〜」

ゲロゲロ笑うケロロに、クルルは背中を小突いた。

「いた、・・・・・・ねぇクルル」

「なんだ、」

ケロロは小突かれた際潰しそうになったガンプラを必死に守りながら、クルルに話しかけた。

「我輩に、告白は?」

「・・・は?」

何をおっしゃいましたこのボケガエルは。

「だって我輩だけいっぱい告白したのって不公平じゃん!」

「・・・・・・」

いや、それはあんたが勝手に言い出した事じゃねぇか。聞けって言われたから聞いただけなのに、俺まで言わなくちゃいけねぇとかマジありえねぇ。不公平じゃねぇよ、俺にとっちゃあ理不尽だ。
等と思ってたクルルに、ケロロは話しかける。

「我輩の事、好き?」

その声は何時もより緊張している様な気がして。

「大嫌いだぜぇ?」

ちゃんと返してあげた。

「ゲーロゲロゲロ!嬉しいであります!」

ケロロは嬉しそうに笑った。

「『嫌い』なのにかぁ?」

「クルルの『嫌い』は『好き』でありますからなぁ!クルルは捻くれ者でありますから」

その答えに、クルルは笑った。
背中合わせのまま、クルルとケロロは笑う。

「我輩も大好きだよ」

背中が暖かかった。







告白フレーバー



気障な台詞なんて要らない。

それが、一番君らしい。



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