時々、頭の中で声が聞こえる。それはまるで何処かから電波を受信してるような突然さで。
聞こえる声は男のもので、聞いたことのない声。
だけど、どこか懐かしい。
その声を聞く度、俺は喪失感を感じる。
俺に大切な物なんて在る訳ないのに、笑ってしまう。それでもそう感じてしまう。やっぱり俺は危ない奴なのかもしれない。
ただその声は、心に染み渡る。

「君は誰なんだい?」

俺は一人問い掛ける。
俺の中にいる君が、誰だか分からない。きっと大切な人なのだろう、俺の中の君は大きな存在のような気がする。

「ねぇ、俺は君に会った事がある気がするんだ」

少し前、よく君と一緒に話したり悪戯したり、カレーも食べた気がする。あるはずのない事なのに、俺には有った事の様にしか思えないんだ。
でも俺の中の君は、いつもぼやけていてよく分からない。確かにそこに存在しているのに、記憶が曖昧になる。

「俺達は親友だったよね」

笑いながら、話し掛ける。
いつもいちばん近くにいた存在。もう会えなくなってしまった親友。
君が俺の中だけの存在で、実際にはいなかったら俺は頭を調べた方がいいのかもしれない。
でも、君は確かに存在していただろう?

「君は何処にいるの?」

顔も性格も、声以外は何もかも分からない君。
きっと俺が想像もつかない遠くにいる君。
君がいなくなってから、俺はただ同じ毎日を繰り返す。
それでも、俺達は繋がっている。

「何時か、逢いに来てくれるかい?」

星空を見上げながら、笑う。
俺から逢いに行きたいけど、君の場所が分からないから。君が逢いに来てくれないか。
それまで、俺は君の声を抱いていくから。忘れないように、埋もれないように、君を思うから。

「だから、早く来てくれよ」

名前も分からない親友へ。







星空メイプル



ハローハロー、僕の声は聞こえますか?



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