身体が熱い。貫かれている所はもう快感しか感じない。
俺を組み敷いている男は、楽しそうに笑いながら腰を動かせている。
きっと異例の速さで出世して、天才等と呼ばれている俺を組み敷き思うままにしていて優越感に浸っているのだろう。
俺はただその行為を黙って受け入れる。
何時から始まったのか分からない、この行為。気が付いたらもう始まってしまっていた気がする。
俺が黙って受け入れるのは、諦めているからと相手が『上』の奴だから。上の奴には逆らえない。ならさっさとヤって、早く終わらせた方がいい。

「何を考えているのだ、曹長殿?随分余裕だな」

男が嫌らしく笑いながら話し掛けてくる。それに俺は無視をしたら、男は思いきり奥を突き上げた。

「好きな相手の事でも考えているのかね?」

その言葉に、俺は身体を強張らせた。
頭に浮かんだのは、赤い人。
こんな俺を綺麗だと笑った赤。
俺のその様子に、男は嘲る様に笑った。

「ほう、お前に好きな奴が出来るとはな。相手も不憫だな、お前に好かれてしまうとは」

本当にそうだろう。
こんな俺に好かれても、きっと困るだけだ。
だけど、気持ちが止まらなかった。
あの時、俺の事を綺麗だと、俺の事を好きだと言ってくれたから。
こんなに汚い俺を綺麗だと笑って。
こんなに汚れている俺を好きだと言ってくれた。
綺麗な訳がない、俺に愛される価値なんてない。
俺が触ったら、きっとあの赤も汚れてしまう。
俺みたいになってしまうから。
だから、せめて想うだけでもいい。
そう思っていたのに。

「好かれる価値があると思っているのか?お前が」

思ってないさ。
だからもうあの赤の事を考えさせないでくれ。
自分がどんなに汚いか、分かってしまうから。
男はそんな俺に至極愉しそうだった。

「抱いて欲しいのだろう?その男に。その男の熱を感じたいのだろう?」

なら、抱かせてやれば良いではないか。
そう耳元で男が囁いた。
俺はただ喘ぎながら首を振ることしか出来ない。
そんな事聞きたくないのに、身体が動かない。

「想像してみればいい。ココにその男のモノを挿れられ、その男の熱を中に感じる」

そう言いながら、繋がっている入口を指でなぞる。その感覚に肌が粟立つ。
例えば、今俺の中に在るのが赤のだったら。
今俺を抱いているのがあの赤だったら。
そう思うと、身体が熱くなった。

「身体は正直だな、締め付けが良くなったわ」

そう言って、男は俺の腰を掴み激しく動き出した。

「そのままその男の事を考えろ。そして、今誰に抱かれているのか思い出せ」

それは、なんて残酷だろう。
心では赤を想って、身体は赤ではない男に開いている。
どうしても自分は汚れていると自覚してしまう。
これ以上ない程、絶望を感じてしまう。

「初めてみたわ、泣いておるのか」

その言葉に驚いた。
泣いている?誰が?俺が?
驚いて瞬きをしたら頬の上を涙が流れていき、確かに泣いていた。
泣くのなんて何時ぶりだろう。
物心がついた時から泣いた記憶なんてない。
なのに、何で泣いているのだろう。
何で、涙は止まってくれない。

「そんなにその男が愛おしいのか。だが、お前は私の物だ」

飽きるまで抱いてやろう、男は笑いながら言う。
俺はそうして本当の絶望を味わうのだ。
泣きながら男のモノを受け入れ揺さぶられ、それに身体は歓喜する。それがまた俺を堕としていく、その繰り返し。
俺はどんどん堕ちて、嵌まって、汚れていく。
それでも、あの赤を想って、あの赤の言葉に縋っていれば大丈夫だと。きっと汚れて醜くなっても壊れないから。
だから、想うだけなら赦してほしい。

「くっ・・・!」

男は小さく呻いて俺の中に熱い飛沫を流し込んで、俺はその熱で果てた。
朦朧とする意識の中、俺は思った。
ああ、俺は中も外も汚れてしまった。






嘘みたいなアイラブユー



それでも、愛されてみたかった。



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