竜が俺の中で動いている。
その感覚に、思わず声を上げてしまう。
嬌声なんて上げたくないのに、竜が俺の身体を触ると思わず上げてしまうから、余計嫌だ。
なのに、竜は俺が声を上げる度に嬉しそうに笑う。
その顔が、何時もみたいに人を馬鹿にした様な笑みじゃなくて、本当に大切な物を見るようで。恥ずかしくて目も合わせられない。
ずくん、と、俺の中の竜が一際深く動く。それに、俺も一際大きく声を出してしまう。
竜はやっぱり笑うから、恥ずかしくて竜の背中に手を回して顔を見れないようにした。
そうしたら、竜は勘違いしたのか激しく動き回りやがった。
耳元には、竜の息遣いと声が聞こえて。
身体は抱き合ってるから、相手の体温と速い鼓動さえも分かって。
繋がっている所は溶けて、竜と一つになっている錯覚さえ感じる。
何処もかもが熱くて。
このまま、溶けてしまいそう。
そんな事を感じて、俺たちは果てた。










後始末をして布団に寝ていた俺は、布団近くで煙管を吸っている竜を見た。
顔立ちはすっきりしていて、細身で、でもしっかりと筋肉がついていて。お世辞ではなく、本当に格好良い。
しかも、相手は一国の主で。
対して、俺はただの忍で。
釣り合うはずが無い。
認められる訳も無いし、許される訳も無い。
なのに、何でだろうね。
忍なのに、こんな気持ちを持ってしまった。


「竜の旦那は、俺なんかの何処が良いのかねぇ・・・」


ぽろり、と呟いてしまった言葉は、耳が聡い竜にしっかり聞こえてたらしく、竜はさっきとは違う嫌らしい笑みを浮かべた。

「Ah?何だ、いきなり」


笑いながらそう聞いてくる竜が何を考えているのか、さっぱり分からない。


「だって、俺たかが忍だよ?竜の旦那なら俺なんかじゃなくて、もっと美人さんとかの方がお似合いじゃない?」


ずっと思っていたことを言う。
この竜に俺は相応しくない。周りが認める訳もない。
そう言うと、竜は笑みを深くして笑った。


「Are you stupid?周りなんて関係ねぇだろ」

「いや、アンタの場合はあるでしょ?一国の主なんだから・・・」

「関係ねぇな」


竜はやけにはっきりと言った。
関係ない訳ないじゃないか。アンタは主なんだ。忍なんかと関係を持つなんて、有り得ない。まして、敵方の忍なんて以っての外だ。

「関係ねぇよ」

竜はまた、言った。


「周りの奴が何言おうが知ったこっちゃねぇ。俺はお前が好きだし、お前は俺が好きだろ?それ以外に問題があるか?Ok?」


竜は真顔でそんな事を言い放った。
問題?あるに決まってるじゃないか。ありまくりで困っちゃうくらいだよ。
でも、竜がそんな事を言うから、問題なんかないと思ってしまう。
竜が言うから大丈夫なんだ、なんて、俺どんだけ乙女なんだよ。これじゃあ、軍神を想っている忍の事も何も言えないじゃないか。


「俺が、誰を好きだって?」

なんかムカついたから、嘲笑う様に言ってやった。

「Oh,sorry!気付いて無かったのか!お前は、俺の事が、好き、だろ?」

馬鹿にした様に、一字一句区切って言いやがった。

「とんだ自惚れだね」

「Ha!自惚れなんかじゃねぇ。事実だろ?」

「さあ、どうだか」

ごまかす様に言えば、まるで俺の心を見透かした様に、竜はニィ、と意地の悪い笑いを浮かべた。

「素直になろうぜ、Darling?」

「俺はいつでも素直だよ」

あぁ、分かってるよ。捻くれてるって。
だって忍だもの、素直になんかなったら生きていけない。
竜が面白そうに笑っている。
分かってるよ、自分の事だから。
好きなんだよ、考えただけで嬉しくなるくらい。
自分でも驚くくらい、好きなんだよ。
でも、好きなんて言ったらなんか悔しいから。好きだなんて、絶対に言わない。


「OK,取りあえず布団の中に入らせてくれ。寒い」

そう言って、竜は布団の中に入ってきた。
無視を決め込んでいる俺を、竜が背中から抱き締めてきた。
竜の体温が暖かい。
隣にいて、抱き締められているだけで、こんなにも胸が高鳴ってしまう。
竜に触れている右手が、震えてしまう。
このまま時間を止めてほしい、なんて思うのは、きっと暖かいから。
泣きそうになっているのも、暖かいから。

「I love you」

竜が俺の耳元で囁いた。
何時しか教えてもらった、南蛮語。意味を思い出した瞬間に身体が熱くなっていくのを感じた。
嬉しくて死んでしまいそう、なんてなんかの勘違い。
ぎゅっ、と竜の腕を握っているのも、なんかの気の迷い。
後ろにいる竜が嬉しそうだ。
やってるこっちは凄い恥ずかしいんだから、ちょっとは空気を読んで静かにしてよね。
だから、今すぐもっと強く抱き締めて。
明日の、また敵と忍に戻ってしまう前に。また、近くて遠い存在になってしまう前に。
俺を抱き締めて、体温を感じさせて?
絶対に言わない、言えないけど。

「・・・溶けちゃいそう」

小さく呟いたその言葉は、竜にちゃんと届いたらしく、竜は力いっぱい俺を抱き締めた。
そして、竜は凄く幸せそうな声で俺の耳元で囁いた。

「Melt for you」

想いも、ちゃんと届いたみたいだ。






熱帯メルティカル



恋に落ちる音がする。



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