「政宗殿ぉ!今日こそ決着を着けましょうぞ!!」
「上等だ!かかってこい、真田幸村ぁ!!」
何度目になるか分からない、コイツとの決闘。その度に気持ちが高ぶっている。
早くコイツを倒したい。殺してしまいたい。だけどずっとコイツと戦っていたい。殺し合っていたい。そんな矛盾が俺の中に渦巻いている。
「いざ、真田幸村参る!!」
「Come on!Let's party,yah!!」
けれど、そんな心配をする必要はないと云うぐらいに、決まってあいつが現れる。
それも業とらしく、盛り上がっている良い場面で。
今回も例外ではなかった。
「はいは〜い、お二人さん悪いねぇ」
そう言いながら笑う忍は、全然悪い等と思っていないだろう。その笑顔に腹が立つ。
「佐助ぇ!!毎度毎度何故邪魔をするのだ!!」
真田が自分の忍に怒鳴り散らしている。さすがの奴も、こう毎回邪魔されて苛立っているのだろう。
「しかも良い所で何故ちょうど現れるのだ!!」
Ah〜、やっぱり真田も気付いていたか。
「俺様に言われてもねぇ、大将からの呼出しだし。良い所で現れるって言われてもねぇ・・・」
忍はそう言って、困った様に笑った。
それでも文句を言っている自分の主を宥め、俺に対して悪いねぇと言ってきた。
一度、忍の本心からの謝罪を聞いてみたい。
「さて、じゃあ旦那連れて帰るけどいい?」
「Noっつても連れてくんだろ?」
「あはは〜、さすが竜の旦那分かってるぅ!」
そう言って笑う忍は、本当に忍なのかと疑う様な笑顔だった。
「ホント悪いね、旦那」
「悪いと思うなら邪魔すんなよ」
「いいじゃない、楽しみが延びたって思えば」
「つまりてめぇは悪いと思ってねぇな?」
「あはは、」
笑いながら、忍は主である真田を腰に抱えた。それが許される主従がいる事に驚いた。
以前聞いてみたら、肩に担ぐ、背負うは忍の速度で走られると激しく酔うらしく、横抱きというのは真田がさすがに嫌だと言ったらしい。はっきり言って、腰に抱えられるのもどうかと思う。けれど二人はそれで良いらしく、忍は「旦那、我が儘だよね〜」なんて、普通の主従なら首が飛ばされても仕方が無いことを笑って言っていた。
「さてと帰りますか」
「うむ、政宗殿今度こそ決着を着けましょうぞ!」
腰に抱えられた真田が叫ぶ。これが俺のライバルかと思い、少し落胆した。・・・何と言うか、情けない。
「じゃあまたね、竜の旦那」
忍はそう笑って、黒い羽根を残して自分の主と共に消えた。
「『またね』って・・・」
次も邪魔する気じゃねぇか。
しかし『またね』か。
また、あの忍に会える。そう思うと真田と対峙していた時とはまた違った、よく分からない感情が高ぶる。どす黒く、熱い感情。
あの邪魔な忍を殺したいのだろうか。あいつと殺り合いたい。あの眼を俺だけに向けさせたい。
「俺もやべぇかもな・・・」
一人、自嘲する。
頭には真田ではなく忍がいて。
あの忍を自分に向けさせたいと考えている。
いつも邪魔するあいつを、待っている自分がいる。あの黒い羽根を残して消える、あのいつも笑顔でいるあいつを引き留めたい自分がいる。
「次はねぇかもな・・・」
次来たら、殺してやろうか。
そう考えながら、俺はあいつの残した黒い羽根にキスをした。
「待ってるぜ、佐助」
邪魔虫フェイバリット
邪魔なのは、主か忍か。