誰もいなくなった教室で、俺とかすがが向かい合って話していた。
俺は、椅子の背もたれを抱くようにして後ろを向く。
この体勢だと、かすがの綺麗で美しい美脚が見れなくて、少し残念な気持ちになる。
「今日も謙信様は美しかった・・・。あの笑顔で笑い掛けられると、まるで天に昇る気持ちになる」
という様に、さっきからかすがの謙信様語りを聞かされっぱなしだ。相槌をするのも疲れたし、いい加減『謙信様』にウンザリした。
「ねぇかすが。俺との会話、しない?」
そう言うと、かすがはちら、と俺を見てすぐ目を逸らした。・・・ちょっと寂しい。
「まぁ、お前といるのだしな。で、どうなのだ最近は」
「何が?」
会話してくれたのは嬉しかったが、話題が分からなかった。
「何がではない。伊達とは最近どうなのだ」
「はあ?伊達ちゃん?なんで?」
つい素っ頓狂な声を上げてしまった。だって、なんで伊達ちゃん?せめて旦那じゃない?世話してるんだし。
「お前と伊達は付き合っているのだろう?」
「はああ!?」
思わず叫んだら、かすがにうるさいと睨まれた。
何がどうなったら、そうなるのか分からない。かすががそう思っていて、受け入れている事も分からない。
「意外だったといえば、意外だったな。私は母性本能をくすぐる真田か、逆に頼れるタイプの前田だと思っていたのだが・・・」
母性本能って、俺様男ですけど・・・?じゃなくて!
「ちょっと待って!なんで相手が男なの?!」
「・・・うるさい、叫ぶな」
「いや叫ぶよ!何イジメ?俺そんな風に思われてたの?」
「・・・違うのか?」
「違うから」
首を傾げるかすがにため息を吐く。この子供の頃からの幼なじみに、俺はそんな風に思われていたと思うと涙が出る。・・・小太郎は違いますように。
「俺はホモじゃないよ・・・」
「そうか、悪かった。お前は女子からの告白を全て断っているから、男色なのかと・・・」
かすがは本当にすまなそうに謝ってくれた。素直な良い子だなぁ。
「まぁ、告白は断ってるのは本当だしね。でも俺は女の子が好きだよ〜。ただ告白される子にときめかないだけ」
「そういうものなのか・・・。ではどんなのにときめくのだ?」
「かすがとか」
「馬鹿にしているのか、真面目に答えろ」
俺の真面目な告白はキレイにスルーされました。
あ〜あ、いつもそうだよ。ホント報われないよ、俺様。
「・・・そうだねぇ。意地っ張りで素直じゃなくてまっすぐで、人に弱みを見せないくらい強いのに、何処か儚くて綺麗な人?」
これでかすがに伝わるだろうか。
「・・・お前、それは、」
「うん、」
気付け、さすがに気付くだろう。俺は言った時、しっかりお前の目を見たし、雰囲気もあるし。
「・・・やはり、伊達の事ではないのか?」
気付かなかった。
ホント俺様報われねぇよ。さっき言ったじゃん、女の子好きだよって。かすがにときめくよって。
なんで伊達ちゃんに行っちゃうの。どんな思考回路してんのこの子。
確かに伊達ちゃんは綺麗だよ?でも、いつも伊達ちゃんとは喧嘩しかしてないじゃん。あんまり仲良くない感じじゃん。見て分かるじゃん、なのになんで伊達ちゃんなのさ。
「佐助・・・?」
急に黙った俺を、かすがは心配そうに覗き込んだ。あー、可愛いな。
「・・・なんでもないよ」
弁解する気力も失せてしまった。
目の前のかすがは、俺と伊達ちゃんとの事について話している。俺とかすがの楽しいお喋りは、遥か彼方に飛んで消えてしまった。
俺は、もう話しに着いて行くのを諦めて外を眺めた。
窓の外は綺麗な夕焼けだった。
相対グロウス
ホント、報われない。
―――――――
政佐前提の佐+かすにしようとしたら、佐→かすになってしまった。
かすがは愛があれば性別は気にしない子。