ガチャリと錠の落ちる音がした。
薄暗い牢と呼べる部屋の中で、その音を聞いて眉を寄せる。

「筆頭がお呼びだ、出ろ」

現れたのは伊達軍の兵士で。
やはり良くない事だと分かり、内心舌打ちをした。
独眼竜に会って殺されるのか、拷問されるのか、またはその両方か。どれも勘弁して欲しい所だが、そうはいかないだろう。
旦那はどうしているのだろうか。そう思いながら、両手を後ろで塞がれ鎖で両足を繋がれた状態のまま、静かにその兵士に従った。



「良い格好してるなぁ、monkey?」

俺が竜の部屋に着いた途端、竜は嬉しそうに言った。それに腹が煮え繰り返るのを感じる。
殺気を出し睨み付けてやったが、兵士達に取り押さえられ膝を付いたまま竜と対面しているので迫力も何もないだろう。
こんな態勢は例え忍でも屈辱で。

「そんなに睨むなよ、怖いだろ?」

くつくつ笑いながら、竜は言った。
怖いなんて思っているはずなんかないくせに。殺気を出し睨み付けている俺を面白がっているんだろう?
その様子に、心の底から嫌悪と殺意を抱く。

「Hey、無視か?つまらねぇなぁ、なんか喋れよ」

まるで子供が新しく愛玩具を手に入れた様に、竜は嬉しそうに言った。

「なぁ、さす」

「殺せよ」

竜が俺の名を呼ぶのを遮ぎる。お前なんかに名を呼ばれたくない。言った声は低く殺気を帯びていた。
竜は、そんな声でも俺が喋ったのが嬉しいらしい。本当に楽しそうに笑った。

「お前ら、出てっていいぜ」

俺を取り押さえていた兵士達に向かって命令する。
兵士達は命令通り俺を離し、部屋を出て行った。押さえ付けられていた肩や腕が軋む。
出て行く途中、竜が「今日はこの部屋に誰も近付けるな」と言い、兵士達はただ頷いていた。

「やっと2人きりになれたなぁ、佐助」

俺の目の前で笑う竜に、俺はただ睨み付ける。
視線で人が殺せればいいのに。視線で人を殺せるなら、竜は何回死んでいるだろう。

「俺は何も話さないよ。あんたの顔も見たくない。殺すならさっさと殺せよ」

拷問しても絶対真田、または武田について話す気はない。
あんたと同じ場所にいて、向かい会ってあんたの笑顔を見ているなんて吐き気がする。
そう言うと、竜はより楽しそうに笑った。

「お前は殺さねぇよ」

その笑顔は子供の様に純粋だった。

「やっと手に入れたんだ。しかもお前は武器がなく、身体も拘束されてる。こんな最高なpet殺す訳ねぇだろ?」

そう言いながら、竜は俺の頬を優しく撫でた。

「死ね」

撫でられる感覚に吐き気を覚えながら、唯一自由のきく口で竜を拒絶する。
それに、竜はただ笑いながら俺の頬を触る。

「いいねぇ、お前のその眼は好きだぜ?だがなぁ、」

頬を撫でていた手が、いきなり止まり。
次の瞬間、腹に衝撃が来た。

「躾はちゃんとしねぇと。なぁ、佐助?」

「かっ、は・・・」

「それとも真田は躾をしない奴なのか?」

「ふざけ、るな・・・・!」

殴られた腹を押さえることも出来ずに、俺は声を絞り出す。

「あんたなんかと、一緒にしないで、くれる?」

竜の口で、あの人を語るな。
あの人は、竜なんかとは違う。
竜なんかと、一緒にされるなんて侮辱以外有り得ない。

「Ha!本当に崩れねぇな、お前は」

だからこそ、崩しがいがある。
竜は俺の目の前で、笑った。

「殺しはしねぇ。ただ俺を満たせてくれよ、Petting?」

そう言われて、口づけをされた。
舌が、俺の口の内を這う。
竜の唾液が、流し込まれる。
俺の舌が吸われ、上あごを舌で撫でられる。
気持ちが、悪い。
だから、動き回っている竜の舌を噛んでやったら竜は俺から痛そうな顔で離れたので、少しすっきりした。

「Hey、もっとcuteになろうぜ?」

「はっ、」

舌を出す竜に、俺は鼻で笑ってやった。
竜は気にした様子も無く、俺の首に顔を近付け舐めた。

「まぁ、そんな所もcuteだけどな」

首筋に舌が這う。
竜に触られた部分が、やけに熱く感じる。
竜は首に顔を近付けながら、笑った。

「真田はしてくれないんだろ?」

その言葉に、固まった。

「大好きな真田は、今俺に熱中だ。しかも、お前は大切な部下。手ぇ出してくれる訳ないよなぁ」

首筋から顔を離し、耳元で楽しそうに竜は言う。

「殺してやる」

その言葉に、竜はただ笑った。

「俺を殺したら、お前の大好きな旦那はさぞかし落胆するぜ?」

「・・・っ!」

殺したい。殺したいのに。
旦那の為に、殺せないなんて。
俺の目を見ている竜は、にやりと笑う。
この竜は、俺が旦那の為に自分を殺さないと確信しているのだろう。
だから、ただ笑って俺を面白がっている。
それは何て屈辱。殺したい相手が目の前にいるのに、殺せない。
『道具』として、機能を果たせない。

「ホント、お前はcuteだな」

睨み付けてる俺の目に竜は口づけをして、そのまま口にもしてきた。
今度は舌を噛むことも出来ない。旦那の為に、竜を傷つけてはいけないから。
口づけをしながら、竜は俺の腕の拘束を取った。
竜は思う存分口づけた後、今度は俺の足枷と衣服を脱がし、俺を押し倒す。
素肌に、竜の手が這う。
俺の身体にある傷を、愛おしそうになぞる。
その感覚に、肌が粟立った。

「は、っ・・・・・・!」

竜が俺の身体を触る。
優しく、俺の快感を引き出すように。
どうせなら痛く自分勝手にやってくれた方がいいのに。
そうしたら、耐えられるのに。
こんなのは、嫌だ。

「やめ、ろ・・・!」

耐え切れなく俺は言ったら、竜は意地の悪い顔で笑った。

「優しく抱いてやるよ。優しく、壊してやる。俺だけを見る様に、俺だけを考える様に。真田なんか思いもしない様に、俺だけにしてやる」

竜は言う。

「お前を抱くのは俺だ。Please you to the utmost,my pretty pet」

そして、優しく笑った。









「もう帰っちまうのか?」

あれから、言われた通り竜に優しく抱かれた。
どれだけ嫌だと、耐えられないと思っただろう。それくらい優しく、甘い行為だった。
その行為が終わって、目が覚めると竜はいなくっていた。
だから、俺は逃げようとした。
したのに、竜に見つかった。いや、竜はきっと俺が出る直前だと分かって来たのだろう。本当に性格が悪い。

「帰らせる様にしたのはあんただろ?」

気づいた時に近くに俺の服と武器が置いてあった。

「俺を逃がしていいの?」

あれだけ俺に執着していたくせに、今度はあっさり逃がしやがって。意味が分からない。
そう言ってやれば、竜は楽しそうに言った。

「お前が俺の物だって事を、あいつに見せ付けるのもいいかと思ってな」

「ホント、最低だねあんた」

吐き捨てる様に言えば、竜は笑った。

「お前は本当にcuteだったよ、佐助」

一瞬訳が分からなかったが、それはあの行為に対する物だと分かって屈辱と殺意が込み上げてきた。

「いつか、殺してやる」

そう吐き捨てて、外に出た。
久しぶりの外は何だか綺麗に感じて。
捕まってから何日経ったのか分からないが、きっと旦那が心配しているだろう。そう思うと急ぎ足になる。
だけど。
俺が吐き捨てた後、竜が言った言葉が耳に残り足が重くなる気がする。
笑って言っていた言葉。
けど、多分竜の本当の気持ち。
捕まる訳にはいかない。俺は旦那の物だから。
これからずっと竜から逃げなくてはいけないのか。
俺に竜は殺せないから。

「でも絶対に逃げ切ってやるよ、政宗」

そう言って、俺は笑った。






執着ナスティ



何時かお前の全てを俺の物にしてやるよ、佐助



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