何時も通りの放課後。
いきなり立ち上がって言った。

「今夜、星見に行こうぜ!」






「てかさぁ、伊達ちゃんもたまにはいい事言うんだね」

「ちょっとロマンチストだけどね〜」

「高校生で星見に行こうって」

「Shut up!うるせぇ!」

佐助と慶次と元親が茶化す様に言うと、政宗が恥ずかしそうに怒鳴った。

政宗が今夜星を見に行こう、と言ったのが放課後。
異論する人なんて居るはずもなく。
その後、皆は一度帰って各々支度をして夜に集まった。

「ぬぅ、本当に学校に忍び込んでも大丈夫なのでござろうか・・・」

「大丈夫だって!プールに行くだけだし!」

「その辺は元就が調べてるだろ」

なぁ、と元親に声を掛けられた元就はふん、と息を吐いた。

「校舎は流石に危険だが、プールならば問題ない。あそこには防犯装置など無いからな」

そう言った元就に、慶次が「さすがぁ!」と喜んだ。
幸村も安心したのか「ならば楽しもうぞ、佐助!」と声を上げる。

「お前がこういうのに来るなんて珍しいな」

元親がさっきから疑問に思っていた事を聞いてみれば、元就はただ静かに答えた。

「星を見るのだろう?」

「あぁ、お前天体好きだったな」

太陽、元就に言わせれば日輪に対する熱狂的な信仰を思い出しながら元親は言った。
そんな2人の話を聞いていた佐助が会話に加わる。

「なになに?ナリちゃん天体好きなの?」

それに続き、慶次も言った。

「もしかして元就も政宗と一緒で意外とロマンチスト?」

「俺はromanticistじゃねぇっつってんだろうが!」

「伊達などと一緒にするな。虫ずが走る」

「おま、それは酷くねぇか?」

「だから俺は違ぇって言ってんだろ!聞けよ、このfools!!」

「フルーツ?佐助、フルーツが有るのか!?」

「Foolsだ!この馬鹿ども!」

「貴様、他の奴らは否定せぬが俺を馬鹿だと言うのか!?」

「いや、否定しろよ」

そんなくだらない事を言い合って、はしゃいでバカし合って笑っているうちに学校に着いた。
プールのフェンスをよじ登り中に入る。
だが元就だけは入口の鍵を開け、最後に入ってきた。

「お前鍵が有るなら言えよ!」

「調べたと言っただろう?鍵くらい有るに決まっているではないか」

「普通はねぇよ!」

余分な体力を使っちまったじゃねぇかと喚く元親に、元就はあっけらかんと応えていた。
そんな二人の様子を笑いながら見つつ、佐助はプールに足を入れる。
まだ残暑が厳しいのにさすがに夜は肌寒く、プールに入ろうなどという気はしない。
他の皆もプールに入るつもりはないだろう。プールサイドではしゃいだり、言い合ったりしていた。
そんな声を聞きながら、佐助は空を見上げた。
夜空は、星が降るようで。

「きれい・・・」

思わず、呟いた。
それに、横にいた慶次が頷いた。

「満天の星空ってこういうのなのかねぇ」

空を見上げながら、慶次は言う。
佐助はそうかもね、と応えて空を見た。
政宗達も静かに星を観ていた。
だが、それもつかの間で。
幸村がおお!といきなり叫んだ。

「うるせぇ!何だいきなり!」

「政宗殿!見て下され!あの星は大きいですぞ!」

「分かったから近くで叫ぶな!」

興奮気味の幸村に、政宗が言う。
政宗は幸村が指した星を見て、Ha!と笑った。

「まだまだだな、真田幸村ぁ。あの星の方がでかいぜ?」

そう指を指した星は、確かに幸村のよりも大きくて。
悔しそうにその星を見ていた幸村に、政宗は楽しそうに笑った。

「お前に負けてなんかいられねぇからなぁ」

「ぬぅう!ならば全力でお相手致す!」

「いいねぇ、楽しもうぜ?」

Let's party!と叫んで、幸村と政宗はより大きな星を見つけるという勝負を始めた。
元就はその様子を冷めた目で見ていたが、もう諦めたのか一人静かに星を観察し始めた。
その元就の横に、元親もかすかに笑いながら星を見上げいる。

「ねぇ、佐助。夏の大三角ってどれ?」

慶次は星を見ながら佐助に聞く。

「ん?ほらアレじゃない?デネブと、ベガと・・・・・・、あれ?アルタイルはどれだっけ?」

佐助は星を指しながら言っていたが、アルタイルだけが見つからなかった。
慶次はそんなに気にした訳ではなさそうに、「佐助って物知りだね」と笑っていた。

「ちゃんと名前まで分かってるんだ〜」

「前に教えてもらったからね」

誰からとは言わず、慶次の言葉を軽く流した。
慶次は星を見ながら、デネブ、ベガ、と呟いている。
何かの呪文みたいだな、と思って佐助は笑った。
星を見上げて夏の大三角を探すも、やはりアルタイルだけは見つからなくて。
織姫であるベガがいるのに、彦星であるアルタイルが見つからないなんて。
これじゃあ、一人ぼっちだ。
まるで俺みたいだと、佐助は思った。

「政宗殿!アレは如何でごさろう!」

「確かにアレはでけぇな、だが俺の方がでかいぜ?」

政宗と幸村は楽しそうにはしゃいでいる。
言ったのは幸村で。
言えなかったのは、佐助だった。
いつからだろう、佐助は政宗を目で追いかけていた。
だけど、分かっていた。
自分のこの想いは、届かないと。
気付いた瞬間、泣きそうになった。
それを必死に我慢した。泣いては駄目だと、自分に言い聞かせた。
気付いた時は、政宗と星を見ている時だった。
政宗に夏の大三角について教わった。
少しからかえば、政宗は怒って。
二人でバカみたいにはしゃいで、笑い合っていた。
二度と戻れない、あの夏の日。

「政宗達、楽しそうだね」

慶次が笑いながら言う。

「いいなぁ、俺も恋したい!」

「佐助はいないの?」と問われ、「俺はいないよ」と興味のないふりをした。
けど、意識は楽しそうな声のする方にいって。
佐助は胸を刺す痛みに顔をしかめた。
そして、気付く。
あぁ、そうか。
好きになるってこういう事なんだ、と。
自分でも、おかしいと思ってる。
届かないと分かっているのに。

自分はどうしたいのだろう。
政宗の隣にいきたい。
たけど、そこは幸村の場所だ。
真実は、残酷だ。
いっそ嫌いな相手だったらよかったのに。
佐助の好きな幸村だなんて、妬ましくも思えない。
つらい痛みが、増していく。

「アレが一番大きいでござる!」

「It's so!アレが一番だな!」

「貴様ら、静かに出来んのか!?」

はしゃぐ幸村達に、元就がキレた。
元親と慶次が笑う。
言い合う声を聞きながら、佐助は星を見上げる。

「きれいだね」

星を見上げながら、言う。
大好きだった。
笑った顔も、怒った顔も。
あの日の様に、星はきらめく。
一面の、星の海。

「Hey、佐助!お前も見ろよ!」

―――佐助!見ろよ、アレ!

あの日の様に、政宗は指を指す。
無邪気な顔で、笑う。
それに、佐助も笑った。






満天スターダスト



俺だけの秘密。



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