「佐助、俺はもうお前を好きじゃなくなったんだ」
思い詰めた表情で、政宗は言った。
「あっそう」
佐助はテレビを見ながら相槌を打つ。
「そう・・・、俺はお前が大嫌いなんだ」
尚も辛そうに政宗は言う。そこには別れを切り出した男の気まずそうな、やり切れない様な雰囲気が漂っている。
「ふーん」
佐助はまた空気のない返事を返す。
「I hate you・・・って何でそんなreaction薄いんだよ!恋人が嫌いっつってんだぞ!?もっと悲しめよ驚けよ俺を問い詰めろよォ!」
そんな佐助に、政宗は仮面を全力で投げ捨て突っ込んだ。
寂しいじゃねぇかと喚いている政宗に、佐助はようやくテレビから目を外し政宗を見た。
「何一人で言って一人で突っ込んでるの。どうせアレでしょ、『そんな訳ねぇだろ、今日はエイプリルフールだぜ?』って格好着けたかったんでしょ?」
「おお、佐助上手でござるな!」
「あはー、ありがと旦那」
佐助の横でテレビを見ながら煎餅を食べていた幸村が、佐助の物真似に感心して拍手を送っている。
そんな光景に、政宗は怒鳴った。
「うるせぇ!何で真田もいんだよ!佐助は俺の恋人だぞ!」
佐助の横に座ってんじゃねぇ!と怒りながら幸村を指差す。幸村はそんな政宗に、少し可哀相な物を見る目線を送りながら、静かに答えた。
「何でって、此処は某の家故」
「空気読めよォ!」
「空気を読んで此処にいる所存でござる。二人きりなど許せぬので」
「何でだ!」
Goddamn!と政宗が叫ぶ。
佐助はそんな二人のやり取りを冷めた目で見ながら、政宗に問い掛けた。
「伊達ちゃん、それだけ言いに来たの?」
「No!言って、佐助の『何で?俺は政宗の事好きなのに・・・!』を聞いて、俺が『俺は大嫌いなんだ。だって今日はApril foolだぜ?』って言って、そっから目眩く甘い世界に入っていく予定だったんだよ」
「流石佐助!殆ど佐助の読みと同じでごさる!」
「これでも付き合っちゃってるからねぇ・・・」
政宗の言葉を綺麗にスルーした幸村は、元気良く笑いかけながら佐助を褒めた。それを受け止めながら、佐助は疲れた様に遠くを見て零した。
と、その時電話の音が聞こえた。それに幸村がピクン、と反応した。
「お館様でござる!」
そう言って、幸村は電話へと駆けて行った。
電話の相手が本当に信玄かどうか分からないが、幸村がそう言うならそうなのだろう。今までそう言って信玄じゃなかった事はなかったはずだ。
「ねぇ、伊達ちゃん」
そう呼ばれて政宗が佐助を見ると、佐助は政宗を真っ直ぐ見詰めていた。
「・・・佐助?」
先程と感じが違う佐助に、政宗が呼び掛ける。
佐助は政宗を見ながら口を開いた。
「エイプリルフールって分かっててもさ、嫌いって言われると辛いんだよ」
だから、
「大嫌い」
「佐助ぇ!」
その言葉を聞いた瞬間、政宗は佐助を抱きしめた。いきなりの事で受け止められず、そのまま佐助は後ろに倒れた。床に押し付けられ、政宗に上から抱きしめられている。
そしてちょうどその時に幸村が戻って来て、
「破廉恥でござるぅぅううう!!」
政宗は思い切り蹴り飛ばされた。
真心アントルー
嘘で本心を隠して。