その日、何故かクルルは人気だった。



独占ラバー



始まりは冬樹のパソコンが壊れた事だ。直してくれないかと冬樹がクルルに頼み、珍しく二言返事で了承したのだ。
ラボで寛いでいたケロロをそのままに、クルルは冬樹と出て行ってしまった。
まぁすぐに終わるだろうと高を括っていたケロロは何をするでもなく時間を潰していたが、なかなか帰って来ない。
気になって冬樹の部屋を覗いてみれば、二人はパソコンの画面を覗きながら熱心に話し込んでいた。

「・・・何してるんでありますか?」

扉の前で何気なく聞いてみれば、冬樹が嬉しそうにケロロに振り返った。

「あ、軍曹。クルルにパソコン直してもらったついでにちょっと相談に乗ってもらってたら、何だか新しい発見しちゃって」

「これなんてどうだい?」

「わあ!凄いよクルル!」

「ふーん・・・」

楽しそうに会話する二人に若干の疎外感を感じたが、まあこういう事もあるんだな、と気にしない様にした。
クルルの事だから、もう少しすれば終わるだろう。
終わったら一緒に遊ぼうと決めて、ケロロはその場を去った。



だが、そこからが長かった。

熱中したらしく、意外に長い時間冬樹と盛り上がり、やっと現れたと思ったら、ケロロが声を掛ける前にギロロが銃の整備をしてくれとクルルに言い、先を越された。
はよ終われと念じたのが功を奏したのか早めに終わったかと思ったら、礼だと言って焼き芋を始めたのだ。
何時もはしないくせに、こんな時ばっかり!とケロロはハンカチを噛み締めたが、流石に乱入出来ずハンカチが悲鳴を上げるばかり。


焼き芋も食べ終わり、クッルルぅ!とケロロが飛び付こうとしたら、今度はドロロと小雪が庭に現れ、満面の笑みで一緒にお昼にしようと誘った。
場所を基地に移動して、三人でランチタイム。
何で今日なんじゃー!とケロロが叫びそうになったが、「クルルさんと親交を深めたいと思いまして」らしい。小雪が本当に嬉しそうに笑うので、ケロロもクルルも何も言えなかった。


二人が帰って、来たぜ我輩の出番!と意気込んだ所で、ケロロは夏美に見付かり首根っこを掴まれ引きずられた。
そこから説教。今日の掃除当番が自分だった事に気づき、泣き泣き掃除をした。


やっと解放されたと思ったら、今度は桃華とタママとクルルが何故かのんびりティータイムを行っている。
ふと時計を見れば、午後三時。あぁ、おやつの時間でありますなぁ、と動きが鈍くなった頭でぼんやりと考え、肩を落とすしかなかった。


夕方になれば、今夜はカレーというのを聞き付け、クルルは夏美と一緒に買い出しに行ってしまった。
帰って来るなり、今度はキッチンで夏美に指摘しながらカレー作り。そのお陰で今夜のカレーは絶品でした。
夕食後、片付けをしている内にクルルは消えていて。終わってラボに来たらクルルがいて凄く嬉しかった。
クルルと話せるという事が嬉しくって、有頂天になって話し始めた。
だけど。
話し始めて十分もしない内に、クルルの電話が鳴った。


で、今クルルは睦実と交信中。

「クック〜、お前も大変だなぁ」

横でクルルが肩を震わせながら笑っている。

「あ?俺は高いぜぇ?」

内容は分からない所為か、何時もより気になった。
そりゃあ、睦実はクルルと仲が良いし、二人でよく一緒に何かやってるし、クルルも楽しそうに話しているからしょうがないけど、やっぱり面白くないのだ。
朝からクルルをいろんな人に取られ続け、夏美に怒られ、本当に今日は厄日だとケロロは嘆いた。
せっかく一緒にいるのに、相手をしてくれないクルルに不服が募る。
そんなケロロに気付かず、クルルは相変わらず睦実と交信中だ。
ああ、つまらない。
そろそろ我慢の限界が来そうだと思った所で、ケロロの耳に思いがけない言葉が聞こえた。

「お前、本当に俺が好きだねぇ」

くつくつ笑っているクルルには、特に深い意味はなかったのだろう。ただ友人として、悪友としての言葉だったはずだ。
だが、我慢の限界だったケロロを動かすには十分な言葉だった。
その言葉を聞いた瞬間、ケロロは勢いよく立ち上がった。そのまま朝からの鬱憤を胸に、ずかずかとクルルに近付いていく。
そして椅子に座っていたクルルを後ろから抱きしめ、握られていた携帯電話を奪い、耳に当てて叫んだ。

「クルルは我輩の物なの!」

いきなり抱きしめられて驚いていたクルルは、その言葉で余計に驚いて固まった。

「クルルは頭のてっぺんから足の先まで全部我輩の物なの!もう美味しく食べちゃったんでありますから!なのに皆寄ってたかって取ってってさ、もう何でありますか!睦実殿もいくらクルルが好きだからって、手を出しちゃ駄目でありますよ!?」

一方的に文句を言うケロロに、クルルは漸く現状を把握したのか、抱きしめられたままため息を吐いた。

「・・・隊長、ちょっと貸せ」

そう言って、今度はクルルが携帯を奪う。何でよぉ!と煩く喚いているケロロを無視して耳に当てた。
向こう側で笑っている声が聞こえて、思わず舌打ちを打つ。

「おい、睦実。頼まれた物はやってやる」

『だから何も言うな?』

「分かってんじゃねぇか」

ククッ、と笑うクルルに、ケロロが「何笑ってるのさぁ!」と声を上げる。それが睦実にも聞こえたのか、『ふぅん、まぁいいんだけど』と、愉快そうな響きを含んだ声で言った。

『愛されてるね、クルル』

「うるせぇよ」

ブチリ、と容赦なく電話を切った。
きっと向こうでは、睦実が笑い転げているのだろうと思うと腹立たしい。
全ての元凶であり、今自分を拘束している張本人に目を向ければ、頬を膨らませてふて腐れていた。

「さっきのは何なんだ?」

そう聞いてみたら、ケロロは膨らませていた頬をブーッ、と音を立てながら萎ませ、口を尖らせた。

「だってさ!皆してクルル取ってくし、クルルは一緒に遊んでくれないし、睦実殿にあんな事言うんだもん!クルルは我輩の物なのにさぁ!」

クルルを腕に捕らえたまま、ケロロは不満げに言う。まだ言い足りないのか、ケロロは小さく文句を言っていた。
クルルはそんなケロロに餓鬼かよ、と内心突っ込む。一緒に遊んでくれなくて、友人に冗談で好きだろと聞いただけでこうも怒るケロロは、小さな子供の様だった。
そんな事であんな事を、しかも睦実に言われるなんて思わなかった。次に会ったらからかわれる事は火を見るよりも明らかで、クルルはげんなりとする。
でも、それがケロロだからしょうがないと諦めた。
けれど、やはり小さな苛立ちが燻っていたので、クルルは若干の仕返しの意味も込めて、何時も意地の悪い顔でニヤリ、と笑った。

「俺は何時からあんたの物になったんだい?」

「うん?クルルは我輩の物じゃないの?」

心底不思議そうに、ケロロは首を傾げた。それに業とらしさはなく、本心から不思議に思ったのだろう。その様子に、質問したクルルの方が面喰らった。
つまり、さも当たり前の事の様に、ケロロはクルルを自分の物だと捉えていたのだ。
分厚い眼鏡の奥で目をぱちくりさせているクルルに、ケロロは無邪気に満面の笑みを浮かべた。

「クルルは我輩の物。で、我輩はクルルの物」

そんなの分かり切ってる事でしょ。
そう笑うケロロに、クルルはお手上げだという様な、呆れの混じった息を吐いた。
回された腕に力が篭る。抱きしめられた腕の中で、ケロロの言葉と今日の出来事を思い返した。
確かに今日は朝しか一緒にいなかったなぁ、と今更ながら気付く。
そして、これから付き合わされるであろう時間を思い描いて、今日は眠れないかもしれないと頭の片隅で考えた。
だが、それもまたしょうがない。
そう思って、クルルは表情を緩めた。






END



分かり切ってたさ、そんな事。













――――――――

相互記念として、「2068」の蔦野様に贈らせて頂きます、緑黄です。

・・・いいんでしょうか、こんな物で。なんか訳の分からない文章になってないか不安です・・・。
ただ「全部我輩の物なの!」云々辺りが書きたかったが為に書きました。すみません!


こんな物で良かったら、どうか貰ってやって下さい!気に入らなかったら、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ。


相互リンク、本当にありがとうございました。



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