慶ちゃんが結婚をした。

プロホーズを受け入れてもらえたんだと報告してくれた時、何時も以上に嬉しそうに笑っていたのが印象的だった。
相手は付き合って5年になる3つ年上の女の人で、とてもしっかりしていて気の回る人だった。
慶ちゃんと俺が知り合った時にはもう二人は付き合っていて、照れながら彼女を紹介された時にお似合いだなと思った。彼女は慶ちゃんのことをとてもよく見ていて、慶ちゃんは彼女のことを優しい目で見ていた。

俺すごい不安だったけど、今はすごい幸せだよ。
そう言っていた慶ちゃんは、最後に佐助のお陰だよと言った。俺はちょっと手伝っただけだよ、彼女が受け入れたのは慶ちゃんだったからだと笑った。慶ちゃんも嬉しそうに笑った。
慶ちゃんはこれからの彼女との生活について楽しそうに話す。俺はそれを笑顔で聞きながら、胸が痛むのを堪えた。
もっと早く出会えていれば。
俺が女だったら。
そんな事ばかり考える。考えては現実に押し潰されて絶望する。
慶ちゃんは俺のことを親友だと言った。俺とは何でも話せるし、隠し事もしない。佐助は俺の親友だよ、と。
ありがと、俺も慶ちゃんと親友になれて幸せだよと俺は笑う。だが、幸せは半分だ。
俺は本当に慶ちゃんと友達になれてよかったと思ってる。こんなに一緒にいると楽しいと思った人は初めてだった。
けど、決して親友以上にはなれないのだ。この気持ちは日々膨らんでいくのに、伝える術はない。膨らんで何時か破裂するのを見てるしかないのだ。

佐助もさ、早く彼女見つけなよ。
慶ちゃんは優しく残酷なことを言う。俺はそうだねぇ、慶ちゃんに先越されるなんてなんか悔しいよねと返した。何それ失礼だなと慶ちゃんは怒って、二人で噴き出した。

ああ、遠くに行ってしまったんだな、と思った。
もう気軽に遊びに行けないし、電話も掛けられない。慶ちゃんの隣は永遠に俺ではない彼女のものになってしまったんだ。
そう思って、泣きそうになった。それを親友である半分で何とか耐え、俺は笑う。
俺の好きな人が幸せになったんだ。今だけは意地を張れ。

「慶ちゃん」

ん?と慶ちゃんは目を合わせてくる。
ああ、好きだなぁと改めて思う。こんなに好きなのは、きっとこれが最後だ。

「おめでとう」

だからこそ、心から喜ぼう。
泣くのなんて後でいい。今はこの幸せを心から祝福しよう。親友として、一緒に笑おう。
今日初めて祝福の言葉を言う。ずっと伝えたかった言葉ではないが、それでも言えてよかった言葉だ。
慶ちゃんは面を食らったように少しだけ目を丸くして、すぐにふわりと笑った。

「ありがとう」

その笑顔は、今までで一番きれいだった。






焼焦リュシオル



さよなら、愛しい人。
























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孫市の年齢が分からない。そして孫市が全く出てこなかったね!←
3つ年上設定は私の趣味です。



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