携帯を弄っていたかと思ったら、次は煙草に手を伸ばしていた。全く落ち着きのない様だ。
そんな政宗の様子をぼんやりと眺め、俺は吐き出される副流煙について考える。確か主流煙よりも害が大きいはずだ。政宗の煙草を吸う姿をよく目にしている俺の肺を想像してみたら真っ黒だった。なんという事だ。
美味しそうでも不味そうでもなく淡々と煙草を吸う政宗を見て、何で吸っているのだろうと思った。あれだけ吸うのなら美味しそうな顔でもすればいいのに。

「ねぇ、キスしてもいい?」

そう言って答えを聞く前に政宗の襟を引っ張ってキスをした。拙い、触れるだけのキスだ。
離れる時に煙草はどんな味なのかと政宗の唇を嘗めてみたら、すごく不味かった。
うぇ、と顔をしかめて政宗から離れる。離れて見えた政宗の顔は、思いの外驚いたものだった。

「珍しいな、お前からしてくれんのとか」

不味い味のするそれを指に挟みながら言う政宗は、少し目を丸くしていた。俺は政宗の言葉にうーん、と気の抜けた返事をしながら、立ち上る煙を眺めた。

「よくさ、煙草の後のキスは苦い味でしたってあるじゃん。本当かなって」

小説でも漫画でも、よくそういう表現がされていた。俺は煙草を吸わないからそうなんだ、と漠然と思ったいただけだったが、煙草を吸う政宗を見て実際はどうなのかと思ったのだ。

「どうだった」

「苦いし不味いね」

何故だか嬉しそうに聞く政宗に、俺は先程の味を思い出してそれこそ苦い顔をして答えた。政宗は俺の答えに楽しそうに笑った。

「もしメンソールのだったらスーッてするのかな」

「そうじゃねぇか?」

「ふーん、不思議だね、たかが煙なのに」

煙に味が付いてるのかな、と考える。副流煙だけではなく主流煙にも味が付いているのだろうか、と立ち上る煙を目で追っていると、ゆらりとその煙が揺れた。

「あー、そうだな」

と、政宗は流すような返事をして、煙が立ち上っていた煙草を灰皿へと押し付けた。煙草はぐしゃりと潰れ、煙が消える。

「で?これだけか?」

「何が?」

潰れた煙草から政宗へと視線を向けると、政宗は何が楽しいのかニヤニヤと笑っていた。

「俺は煙草を消したぜ?構ってほしかったんだろ?」

女たちが騒ぐ顔を綺麗に歪めて、政宗は俺を真正面から見る。政宗はたぶん、俺が弱い顔を分かっているんだろう。それとも俺の惚れた弱味なのか、憎たらしいと思う以上に胸が騒いだ。
バレてた、と内心舌打ちをして、一気に熱くなった顔を誤魔化すように政宗を睨む。

「この気障男め」

口から出た批難は幼稚なもので、声は怒っているというよりも拗ねているようなそれだった。
政宗はそんな俺の幼稚な批難を指摘するでもなく、柔らかく笑っただけだった。

「何とでも。あんなキスじゃなくて、もっと苦いと感じてみねぇか?」

「エロ男め」

「お前にあんな事されちゃあな。おいで、佐助」

笑いながら、政宗は腕を広げる。全て見透かされているようで腹立たしいのに俺の胸は先程よりも激しくなる。
この伊達男め、と思いながら俺は伊達男の座っているソファーへ膝を乗せる。ぎゅうと痛いくらい首に抱きついてやれば、政宗は俺を跨がらせるよう引っ張って身体をくっつけ、仕返しなのか思いきり抱き締めてきやがった。痛いと思うが、先程まで気になっていた距離がなくなったことに満足したから何も言わなかった。
くつくつと政宗は嬉しそうに笑う。普段甘えないし自分の感情をあまり出さない俺がこうやってるのが、政宗には嬉しいのかもしれない。俺にとっては恥ずかしくて堪らないのに、政宗がこんな風に笑うのならまあ良いかと思ってしまうのは惚れた弱味か。
何だか政宗に良いようにされているのが悔しかったので、くつくつ笑っているその口に噛みついた。返されたキスはさっきよりも苦いくせに、どこか甘ったるかった。






涼風ガール



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