「告白ってどうしたらいいんすかねぇ」
「どうしたらって・・・どうなんだろう」
僕はクルルくんの言葉に首を傾げた。
クルルくんは恋をしているらしい。本人はキャラじゃないと言っていたが、僕に相談を持ちかけるくらい本気なんだろう。
僕を頼ってくれた事、そして何よりクルルくんに幸せになってほしくて僕は何回か相談に乗ったが、今回は難しい。
僕はクルルくんが誰を好きなのか知らないのだ。
今まで乗った相談でたぶんケロロくんなんじゃないかな、とかは思ったけど、クルルくんは恥ずかしがって絶対に名前は言わなかった。でも好きな人の事を話しているクルルくんは幸せそうで、ああ、本当に好きなんだなぁと感じて僕も幸せな気持ちになれた。
「・・・『好きです』とか?」
だからクルルくんが告白すると言った時、頑張れと思ったけど、告白の台詞なんかは思い付かない。大体僕は告白した事もないし、クルルくんの好きな人の性格も把握出来てないのだ。
「ありきたりじゃないっすか?」
とりあえず一般的な言葉を言ってみれば、クルルくんは渋い顔をした。どうも駄目みたいだ。
「そうかなぁ・・・一番伝わると思うけど」
「なんかこう、インパクトが欲しいっていうか」
「インパクト・・・」
インパクト、インパクト。告白ってインパクトが必要だったっけ?告白だけで充分インパクトがあると思うんだけどなぁ。
でもクルルくんが言ってるんだ、考えないと、と頭を動かす。
「・・・落とし穴に落として驚いてるところに告白するとか」
「・・・逆に嫌われそうだろ」
「やっぱり?」
うーん、難しいなぁ。告白かぁ、告白。
「『毎日味噌汁を作ってください』とか?」
「古くねぇっすか」
「だよね・・・じゃあ好きなところを言うとか」
「あー、まあそれはアリっすね」
アリなんだ。クルルくんは恥ずかしがりやだから絶対却下されると思ってたのに。
そう思っていたら僕の心情を察したのか、クルルくんはニヤリと笑った。
「俺がこんな事言うなんてっつーギャップと、言われた相手も恥ずかしがるだろ」
「なるほど・・・」
つまりはギャップ萌えと相手を恥ずかしがらせる事を狙ってるのか。クルルくんはなかなか策士だなと思った。
「あとは手紙とかもいいよね」
「はあ?マジっすか先輩」
「え?本気だけど・・・」
え、手紙って駄目なの?
クルルくんを見ると信じられないという顔をしている。
「古いっすよ、先輩」
「そうかなぁ、可愛いと思うけど・・・。文字とか封筒とかでその子の性格とか出るし」
古い、のかなぁ。難しい。
まあ僕が古いかどうかは置いておくとして、今はクルルくんの告白だ。僕のアドバイスは有効か分からないけど。
「クルルくんが想ってる事を伝えれば大丈夫じゃないかな」
僕は告白した事もされた事もないから分からないが、それが一番伝わると思った。
クルルくんはふぅんと頷いて、何か考えるような素振りをした。たぶん告白の言葉でも考えているのだろう。
「あと、どうしたいのかも伝えなきゃ」
付き合いたいとか、一緒に何かしたいとか。そう言えば、クルルくんはただ頷くだけだった。
真剣だなぁと感心する。ここまでクルルくんが本気なのだから、絶対に上手くいってほしい。
「ん、何となく分かってきた」
「そう?よかった」
クルルくんは軽く頷いて僕に言った。僕は安心して笑みを溢す。僕はこんな事しか出来ないけど、精一杯応援しようと決めたんだ。クルルくんの力になれたのなら、とても嬉しい。
「告白する日とか決まってるの?」
ふと思って聞くと、クルルくんは意地の悪い笑みを浮かべた。
「明日」
明日。それは何とも急だなぁ。それとももうそれなりの仲になっているのだろうか。
「じゃあ明日頑張ってね」
出かけた言葉を飲み込んでそう言えば、クルルくんは柔らかく笑った。
その笑顔がとても綺麗で、僕の知らないクルルくんの好きな人が羨ましくなった。
星屑サンセット
僕はきみが好きなんだ。