「俺様さぁ、クラスで不必要な存在なんだって」

そう切り出された会話に、三成は本に視線を落としたまま眉根を寄せた。

「誰かに言われたのか?」

「うん、クラス担任に。クラスの雰囲気が悪くなるのも授業が進めにくいのも、みっちゃんの成績が下がったのも全部俺様の所為なんだって」

ヒステリックな金ぎり声で言った担任を思い出す。
何かある度に良い顔をされず目の敵にされているとは分かっていたが、まさか面と向かって言われるとは思わなかったと肩を竦めた。

「それは貴様の所為じゃないだろう」

三成は相変わらず本を読んでいる。しかしこうやって二人で会話をしてくれるようになったのはすごい進歩だと言える。だって初めて話し掛けた時には無視されまくったから。
暗いとしか印象がなかったが、話すととても面白い事が分かった。元々興味のある事には徹底的にいくタイプだ。構いまくってたらいつの間にか友人のポジションを手に入れていた。

「んー、でもさー、やっぱクラスで俺様浮いてるし?そう言われてもしょうがないかなーって」

周りのクラスメイトは怖いのか話し掛けも関わりもしてこない。
いつの間にか不良、問題児のレッテルを貼られ、人に避けられまくっていた。

「大体私の成績が下がったのは私の責任だ。貴様の所為などと自意識過剰だな」

吐き捨てるように言った三成は、こちらに向こうともしない。本をスルスルと読んでいるのに会話が出来るのがすごいと関心した。

「前から思っていたが、貴様の何処に問題があるのだ」

「見た目じゃない?ほら、俺様髪こんな色だし」

「それは地毛なんだろう?」

「まあ、地毛だけど。でもみっちゃんみたいに病気でなったとか理由ないし、元からって言っても信じられないんでしょ、やっぱり」

「元からとしか言いようがないだろう、他の理由を求める方が馬鹿だ」

「まぁねぇ」

オレンジ色に近い地毛を摘まむ。実際いくら地毛だと言っても信じてくれなかった事は多かった。
三成のように幼い頃に病気にかかり一気に色が変わったとかではないし、信じない相手に信じさせるまで証明するのも面倒臭い。
そう言えば、三成は一度で信じ、夕日みたいだと言ってくれた事を思い出した。本当に泣きそうな程嬉しかった思い出だ。

「それと貴様は言い返さないのが悪い」

そんな事を思い出していたら、三成は話し出した。今日は珍しくたくさん話すなぁと思う。

「確かに喧嘩はするが、貴様が筋を曲げていたり間違った事で手を出した事を私は見た事はない」

三成は本を読んだまま、淡々と言葉を発する。

「それに授業は受けないがそれは教師の授業のやり方の問題もあるし、貴様は成績はそこそこ取れているはずだ。素行は悪いが授業に出た時は妨害をするでもない、何処が問題なのだ」

「それでもさ、周りと同じにならないと『問題児』なんだよ」

「周りと同じとはつまらん教えだな。そんな事を言う教師も、貴様を無視する奴らも、人を噂や見た目で判断するような奴らだ。そんな奴らに無視されようが貴様なら痛くも痒くもないだろう」

「まあそうなんだけどねー」

よくご存知で、と肩を竦める。強くなったもんだ、人に無視されるのが慣れてしまったんだから。
それも目の前で本を読んでいる三成のお陰かもしれない。三成だけは何があっても味方だと信じられるから。三成はしっかり見ててくれて、フェアな判断をして、その上で傍にいてくれるから。

「貴様は問題児なんかじゃない。それでも貴様をそう扱うのなら」

そこで言葉を切り漸く本から顔を上げた唯一の味方は、真っ直ぐな瞳で続けた。

「そんな奴ら、貴様の方から無視してやれ」

「みっちゃん、格好良いね・・・」

ふん、と鼻を鳴らした三成に、胸がストンと落ち着いたのが分かった。






群青シーズ



此処が俺の居場所。





















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高校生設定で、不良な佐助くんと優等生だった三成。こんな関係が好き。


BGMは君と羊と青。



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