名前を呼ばれるのが好きだ。
手を握られるのが好きだ。
隣に座られるのが好きだ。
好きだと言われるのも、愛を囁かれるのも好きだ。




「曹長殿」

落ち着いた、耳に馴染む声で呼ばれると、気持ちが上がるのが分かる。
その声がした方を向けば、ドロロ先輩が柔らかく笑っていた。
どうしたんだい、と問えば、にこにこと笑顔を増して近付いてくる。

「いい天気だったから、クルルくんに会いたくなって」

そう笑いながら、先輩は俺の隣に座った。周りの体温が上がった気がする。

「はー、暇人だねぇ」

それを隠すように憎まれ口を叩く。が、きっと先輩は全て見抜いているだろう。

「暇っていいことだよ」

そう朗らかに笑って、先輩はさりげなく俺の手を取った。

「何してんすか、先輩」

「うん?だってこんないい日だよ、日向ぼっこしたくなるよね」

「いや、それじゃなくて・・・」

いい淀みながら繋がれた手を見下ろし、まあいいかと息を吐いた。
ちょうどここは屋根の上だし、あの忍者娘くらいしか来る心配をしなくてもいい。
それに、せっかくのいい天気だ。
俺が何も言わなかったことが嬉しかったのか、いい天気だということがよかったのか、握られた手に力が篭る。

「いい天気だね」

「そっすねぇ」

二人ぼんやりと空を見上げながら言う。
こんな長閑な日もいいもんだと隣の存在に感心しながら雲を眺めていたら、目についた雲が何だか魚の形に似ていた。

「あ、あの雲魚みたいだね」

似ていると思った瞬間、隣から同じようなことを言っている声が聞こえた。
それに思わず吹き出すと、先輩がどうしたの?と慌てている。
同じことを考えていたと言えば、先輩はとても嬉しそうに笑って、俺も釣られてまた笑った。

「クルルくん」

先輩が空を見る。俺も空を見る。

「好きだよ」

そう言った声はとても暖かくて。きっとこの日差しにも負けていないと思う。

「俺もっすよ」

そう空を見上げながら、俺も言う。
繋がれた手が、とても熱い。
聞いた耳も、近い肩もとても熱くて。

ああ、本当に好きなんだなぁ。
そう、幸せを実感した。






深髄ソウル



だから太陽、傍に居て。



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