『ドリフターズ』
診断メーカー
※豊直よりは豊+直ぎみ。
※お豊の口調はきっと間違ってる。
※時代背景もきっと間違ってる。
※本編で出会ってない二人が出会ってる。
※捏造注意。
「おまん時代はいけなもんかの?」
ぼんやりとした昼過ぎに、島津豊久は急にそんな事を聞いてきた。
その声は興味津々でも遥か遠くを思っての物でもなく、すとんと落ち着いた声だった。本当に少し気になった程度なのだろう。
自分の愛機を見つめながらのその質問に、菅野直は珍しい事もあるもんだと驚いた。周りの連中は愛機や自分がいた時代の話を聞いてきたが、こいつだけは全く聞いてこなかったからだ。
「こげん鉄の塊が空を飛ぶんじゃ、おいには想像も出来ん世の中なんだろう」
「鉄の塊って言うなバカヤロウ、『紫電改』だコノヤロウ」
「おお、すまんの」
愛機である局地戦闘機『紫電』二一型を鉄の塊と呼ばれた事に若干の怒りを込めて言えば、豊久は素直に自分の非を詫びた。
その態度に本当にこいつは戦国武将かと訝しく思えてきたぐらいだ。しかもあの鬼島津と言われた島津家の者だ。もっと荒々しいものだと思っていたが、実際はコレだ。
確かに戦場ではあの第六天魔王に「鉄砲玉」と言われるぐらい我が身を顧みず突進し、首を狩るが、戦場を離れてしまえば、何処かぼんやりとした素直な男と言えるだろう。
想像と現実は違うもんだなぁ、と目の前の戦国武将を見ながらしみじみと考えていたら、その戦国武将が不思議そうに声を掛けてきた。
「直?いけんかしたか?」
「・・・いや、何でもねぇ」
つくづくこいつは分からねぇと思って、直は豊久からの質問について考える事にした。もっとも分からないのは、あの織田も与一も入っているが。
「俺の時代、か・・・」
思い出されるのはやはり自分が所属していた部隊や部下、故郷の事が多い。戦時下だった事もあり、特にその想いは強いが、豊久に言っても伝わるかは疑問だ。
一から説明するのも江戸時代が終わって明治になって、大正、昭和となる為面倒臭い。というか関ヶ原で飛ばされたと言っていた豊久に、江戸時代について説明するのも面倒臭い。
維新とか明治政府とか言えば薩摩の奴は多く出てくるが、こいつは知らないしなぁ。
俺の時代の生活や文化、技術なんか言ってもさっぱりだろう。説明すんのも面倒臭い。
そんな事を頭の中で考えた直は、紫電改を見上げながら、あー、と口を開いた。
「俺の時代はお前から見た鉄の塊は空を飛ぶし地面を走るし、鉄砲も格段と性能が良い。お前らのいう南蛮語だって学ぶし、勉強する事も建物も人も多い。お前の時代から三百年も経ってんだ。技術も文化も進歩したし、制度だって変わった」
まだそんなに戦火が広がってなかった時代、自分が幼かった時代が自然と思い出された。
豊久は真剣に直の話を聞いている。
変に真面目な奴だと、直は口元を緩めた。しかし、すぐにその笑みは不敵なものへと変わった。
「だが、お前が自分の国を守る為に戦ったように、俺達も自分の国を守る為に戦った。相手が内か外かの違いだけだ」
そうだ。こいつが自分の領地を、領主を、家族を守ったように、俺達も日本という祖国を、天皇陛下を、家族を守った。相手と規模が違うだけだ。
そう直がニヤリと笑って言えば、豊久は目を瞬かせた。
「それに相変わらず米食って田んぼ耕して必死に生きて笑ってるぜ?お前の頃と同じ土の上で、日ノ本でな」
続けてそう言えば、豊久は眩しそうに笑った。
「・・・あまり変わっとらんのじゃな」
「おうよ。日本人は日本人だぜ」
「そうかの」
安心したように嬉しそうに朗らかに笑う豊久に、直は何だか誇らしい気持ちになった。
生きた時代も価値観も違うだろう戦国武将と、自分が繋がっているものがあるのだ。
「だからよ。お前らの時代のもんが俺らの時代にも伝わってんだ」
それは日本人という人種であり、日本という土地であり、何より。
「大和魂ってな」
自分の胸を指し、直は笑った。
豊久は目を丸くしている。
数回瞬きした後、豊久は紫電改を見つめ、自分の腰に刺さっている長い太刀をするりと触り、直と向き合った。
「・・・・・・直」
「なんだよ」
その真剣な表情に、直は目を細めながら応える。
豊久の事だから感慨深くも嬉しがると思った。
「なんか今、すごくおまんのこっ抱き締めたいんじゃっどん。いかん?」
「はああああ!?」
しかし実際言われたのは、今までの話の流れからは想像出来ない言葉で。直は思わず声を上げた。
直の驚きようとは打って変わって、豊久は照れたように笑う。
「いや、嬉しくての」
「いや、おかしいだろ!」
「なんかおかしかか?」
「お前の時代は大丈夫でも、俺の時代は駄目なんだよッ!」
豊久の時代は衆道は当たり前だったが、直の時代は違う。
本当にこいつ訳分かんねぇと思いながら直は必死の形相で豊久に怒鳴り散らすが、流石は戦国武将とでもいうか、はたまたそういう性格からか全く効果はなく、すいと腰に腕を回された。
「そげん事関係なか。おいが抱きしめたいだけじゃ」
「どんな理屈だバカヤロウ!」
至近距離でそんな殺し文句のような事を言われ、自然と顔に熱が集まる。
腕を伸ばして豊久の身体を退けようとするが、厚い胸板はびくともせず、直に悔しさを与えるだけだった。
離せと言外に込めて豊久を睨み付けると、豊久には伝わらなかったのか、子供のような満面の笑みを浮かべた。
「おまん中においが時代のもんがあると思うと嬉しくての。それに、直、おまんはその笑顔の方が似合っていう」
「〜〜〜〜ッ!」
薩摩人はみんな人たらしか!と直は心中で叫ぶ。
その笑顔とは、大和魂と言った時の顔だろう。自分ではどんな顔か分からないが、自然に出た笑顔だったのは覚えている。
声に出ない叫び声を上げ、熱くなった顔を豊久から逃げるように俯けた。
直の頭が豊久の肩に触れる。
意外にも優しく触れられた中で、豊久の嬉しそうな声が聞こえた。
「おまんに会えて良かった」
その一言で、少し救われた気がした。
END
菅野直は、腰を引き寄せられて、「なんか今、すっげぇお前のこと抱き締めたいんだけど。だめ?」と言われます。
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