「あ、ナッチー!見て下さい、お花屋さんですよぅ」

買い物の帰り道、隣を歩いていたタママが突然大きな声で言った。
それまで普通の声量で会話していた為、少し驚いてしまう。
普段は通らない道だから知らなかったが、タママが指を差す方向を見れば、確かに花屋があった。

「ホントだ・・・」

小さな店だが珍しい花もたくさんあり、とても可愛らしい店だ。
こんな所にこんな素敵な花屋があったなんて、と考えていると、タママが私の服をくいっ、と引っ張った。下を向くとタママはじっと花屋を見詰めている。そんな様子に笑みが零れた。

「見てく?」

そう聞けば、タママはキラキラした瞳で私を見上げた。

「いいんですか!?」

聞くというより確かめる言葉に私が頷けば、タママは「やったですー!」と喜び、私の手を引っ張って花屋へと小走りに向かって行った。
その拍子に私の持っている買い物が揺れたが、卵と炭酸飲料は入っていないから気にしないことにした。



「ふあー、すごいですぅ」

花屋に入れば、色とりどりの花が咲き誇っていた。タママが感嘆の声を上げ、私も思わずため息をつく。
小さな店の中にある珍しい花や綺麗な花を眺めていると、タママがある花の前で「あ、」と零した。

「これナッチーに似てますぅ!」

「・・・ガーベラ?」

指を差した先には、ピンク色のガーベラがあった。
大きな花が主張するように咲いている。
タママは嬉しそうに言う。

「なんか、堂々と綺麗に咲き誇ってる所が似てるです!」

満面の笑顔で言われ、私も微笑み返す。ありがとうと言えば、「えへっ」と照れたようにタママは笑った。

「ねぇナッチー」

似ていると言われたガーベラを見ていたら、今度は服ではなく繋いでいた手を引かれた。

「ん?」

どうしたの、と言外に問えば、タママは先程と同じ輝いた瞳で見上げていた。

「僕はどれですか?」

キラキラ、キラキラと。期待に満ちた瞳で見上げられ、私は少し困る。
いきなり言われても難しいな、と思いつつ周りを見渡せば、一つの花が目に留まった。

「あれ、かな」

「あれ、ですかぁ?」

二人でその花の前に立つ。

「アネモネ・・・?」

「うん、アネモネ」

目の前には、紫色のアネモネ。
ピンクも赤もあったが、何故か紫に目がいった。

「力強いでしょ?それに不思議な感じがするし。タママみたいじゃない?」

紫色のアネモネを眺めているタママを見て、もう一度アネモネを見る。やはり、何処となく似ている気がした。
似ていると言われたタママは、うーんとアネモネを見詰めながら唸っている。しかし納得したのか、またにぱっと笑い、私を見上げた。

「ありがとうです、ナッチー!」

嬉しそうに言うタママに、こちらこそありがとうと笑う。
そして紫色のアネモネを数本手に取った。
タママはキョトンと首を傾げる。そんな子供らしい仕草を微笑ましく思いながら、私はタママにアネモネを渡した。

「せっかくだから買っていこうか。桃華ちゃんやボケガエルに見せてあげようよ」

そう言ってウインクすれば、タママは今日一番の笑顔を浮かべた。

「ナッチーと僕の花を自慢してやるです!」








心象ブロム



それは花のような笑顔だった。














――――――――――

アミダで決めよう第二弾。

花は私がキャラクターに抱くイメージです。


ガーベラ(ピンク):希望、前進、崇高な美しさ

アネモネ(紫):純心無垢、無邪気、貴方を信じて待つ、儚い恋、恋の苦しみ



花に詳しくはないのですが、アネモネが春先でガーベラが4月以降らしいですから、一緒に置いてあっても大丈夫なはず。違っても責めないで下さいね!



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