暴力表現注意
「ねぇ、達海さん。首絞めさせて」
液晶画面を真剣に見詰めていた達海さんを無理矢理床へと押し倒し、その上に跨がりながら俺はその首へ手をかけた。
達海さんの言葉も聞かずに力を込める。目を見開いて喉を曝した達海さんが可愛くて、俺はその唇へとキスをした。
たまに。
本当にたまに達海さんが嫌いになる。
理由が見当たらないそれは、いきなり出て来ていつの間にか消えている。
そして俺は消えた後に理由を求めて頭を悩ます。
サッカーにしか使っていなかった頭は良いとは言い難く、答えは見つけられなかった。
それが、今俺を蝕んでいる。
手に込める力が強くなる。
いつの間にか消えていくはずのそれは、何故か今回は消えてくれなかった。
「アハッ、達海さん超カワイイ」
力が入らないからか、口端からよだれを垂らし目からは涙が流れている。
そろそろ本当に危ない。そう解っていても手は離れなかった。
達海さんの身体が痙攣し始める。強張っていた身体から力が抜けていく。
ああ、達海さんが死んでしまう。
そう思いながら眺めていたら、俺の顔に何かが触れた。
よく見てみれば、それは達海さんの手だった。
達海さんは微笑んでいた。
「・・・ッカハ!」
手が達海さんの首から離れる。
上手く空気を取り込めないのか、達海さんは苦しそうに噎せながら胸を上下に動かしていた。
そんな達海さんを眺めて、自分の手を見下ろし、また達海さんを眺めた。
あのままだったら、きっと達海さんはいなくなっていた。
そう思った瞬間、苦しそうに呼吸する達海さんを抱きしめた。
「達海さん」
自分の腕の中で、まだ荒く息をしている体温を感じる。
「達海さん」
だけど少し残念だと思う自分もいて。
「達海さん」
頭がごちゃごちゃして、ただ達海さんの名前を呼ぶ事しか出来なかった。
腕の中の達海さんが顔を上げる。血の気は失せていたが、その顔は優しかった。
「持田」
達海さんの手がさっきと同じように俺の顔に触れる。
「泣くなよ、持田」
その手は濡れていない。
掠れて弱々しい、だけど温かい声が自分の名前を呼ぶ。
達海さんは責めもせずに、俺の顔を拭うように指を動かす。
「俺が泣く訳ないでしょ」
そう言えば、達海さんは眉を下げて笑った。
「大丈夫だからさ」
何についてか分からないが、達海さんは俺の顔を両手で包みこんで再び大丈夫だと言う。
「俺はいるから。大丈夫だよ、持田」
その言葉に、本当に泣きそうになった。
そんな顔を見られたくなくて、達海さんを感じたくて、思い切り抱きしめる。背中に回された腕が嬉しかった。
「達海さん」
「うん」
「大好き」
「うん」
「好き過ぎて嫌いになりそう」
そう言えば、回された腕の力が強くなった。
「それは困るなー」
耳元で達海さんの声が聞こえる。
「だって俺持田のこと愛しちゃってるし」
掠れて弱々しいその声に、俺は達海さんから見えない所でまた泣いた。
目一杯ドロップス
それは魔法のコトバ。