世界が広い。
果てしなく広がる世界は眩しかった。
戦争は終わった。人の思惑が絡まり渦巻いていた戦いを、未来を信じた少年達が自らを賭けて切り開いた。
世界を守る為に。
明日を得る為に。

目の前で、大きな鳥が羽ばたいた。そのまま上へ上へと昇って行く。だんだん小さくなりその姿が溶けた青が、何時か見た瞳と重なった。
ああ、あいつは死んだのか。
二年越しにそう思った自分は、酷く実感が沸かなかった。

二年前の戦争を拡大させ引っ掻き回した張本人、自分の親のクローンであるあいつは死んだらしい。
生まれながらの縁で繋がり、一番俺を憎んでいたあいつ。
戦場で対峙したあいつは、以前会った事があると言った。俺の代わりに全てを背負い、俺の所為で痛みを抱いた、あいつ。
だけど、俺はあいつを覚えていなかった。
自分の存在を語ったあいつは、何を思っていたのだろうか。絶望しか感じていなかったのだろうか。そう思うと、後悔と無力さを感じて顔をしかめた。

人を最後まで信じたフリーダムのパイロットが、あいつと同じ存在がいたと言っていた。自分の知らない所で死んでしまった、あいつとは違う、もう一人のあいつ。あいつにも何もしてやれなかったのに、また何も出来なかった自分に腹が立った。
俺が背負うべき罪は、俺が何も出来ない内に手の届かない所まで行ってしまった。俺がその存在を認めてやらなくてはいけなかったのに。抱きしめてやるぐらい出来たはずなのに。
自分の腕を上げる。それでも青には届かない。あの青の向こうの世界であいつは、あいつと同じ存在の彼は死んでしまった。
あいつは死ぬ時、何を思ったのだろうか。俺はあの戦艦を守れた安堵とあいつを止められなかった無力さを感じたが、あいつは溜め込んだ狂気を棄てられただろうか。最期だけは楽になれただろうか。

あいつは全てを壊すのだと言っていた。
扉は自分が開くのだと。この歪んだ世界を無くすのだと。
絶望を吐き散らし、自分の存在さえも呪っていた。そんなあいつにしてしまったのは、間違いなく俺だ。
だから、あいつを止めたかった。あいつの知らない世界を教えてやりたかった。我が儘でも自己満足でも、生きていてほしかった。その為に俺は駆けたのに。
記憶を取り戻した俺は飛べるのだろうか、もうあいつがいないのに。

世界は壊れなかった。狂う程あいつが壊したかった世界は、あいつが嫌う人間によって立て直されつつある。
今、俺はあいつが壊したかった世界に立っている。二年間も記憶を無くし、あいつを忘れていた俺が。
自分さえ知らず、もう一人のあいつにも気付かず、子供達を戦場に送り出し、自分自身の問題だけを見て生きていた俺がこの場にいるのは、とても理不尽に思えた。

青過ぎる世界が頭上を覆っている。ああ、俺が生きているのか。
そう思って、目を細めた。透き通った青に、何故だか泣きたくなった。
今更何を喚いたって変わらない事は分かっている。後悔し、自分を責め続ける事は楽だ。だが、そんな事をし続けたら、俺が生きている意味はなくなるし、死んでいった奴らに対する侮辱だとも分かっている。だから、俺は精一杯生きると決めた。
それでも、やっぱり一生縛られていく。

俺は、叶えたかったんだ。
もう叶えられない、二度も出来なかった小さな願い。

青い世界に溺れていく。生きている事に、叶えられなかった願いに、俺は目を閉じて笑った。






悼請ポンキ



お前達を愛したかった。




















――――――

私はどうしてもムウさんにクルーゼを思っていてほしいのだと実感しました。
家族で幸せになってほしいんですよ、フラガ家には。皆繋がり合ってればいい。

とりあえずネオさんに悩んで頂きたいが為に書きました。



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