世界が憎い。
こんな自分を作り出した世界が憎かった。
人間は愚かだ。自分が正しいと勝手に主張し、殺し合う。だから、そんな人間を利用した。
世界を滅ぼす為に。
全てを壊す為に。

後ろで、光の川が走った。向かう先はあの戦艦。もう避けられないだろうと意識を外した時、頭に電流が流れた。
ああ、あいつが死んだか。
そう考えた自分は酷く冷静だった。

オリジナルの息子、自分の息子であるあいつが死んだ。
唯一の身内であり、最も憎むべき存在の息子。
戦場で再会したあいつは以前よりしっかりした大人で、仲間から頼られる軍人になっていた。
だが、やはり私を、罪を知らなかった。
罪を知ったあいつは、何を思ったのだろうか。絶望を感じたのだろうか。そう思うと愉快さと後味の悪さを感じて、口端が上がった。

目の前には最高のコーディネイター。自分とは真逆の存在。あの存在が許せなかった。
どうして自分達は存在するのだろうか。全てを知って、あいつは自分達の事をどう思ったのだろうか。
機体の腕がもげる。それでも私は絶望を止めない。唯一私を殺せる存在は消えてしまったから。
あいつは死ぬ時、何を思ったのだろうか。私は絶望しか思えないが、あいつはきっと希望を抱いて死んだのかもしれない。

最高のコーディネイターはそれでも守りたい世界があると言った。
守りたい世界、それは私が知らない世界だ。私が守りたかった物は、私が死ねる世界。全てを壊せる世界だ。
機体が壊れる。貫かれた剣が抜かれ、最高のコーディネイターが離れて行く。
彼は帰れるのだろう、あいつが守ったあの戦艦に。守りたい世界に。
私は行けるのだろうか、行きたくて行きたくて堪らなかった場所に。

世界は壊れなかった。あれだけ憎んでいた世界は、死ねると分かったらもう執着もなかった。
心残りと言えば、自分と同じ存在のあの子だが、きっとあの子は自分よりも上手く世界に馴染めるだろう。あの子の保護者が何とかしてくれるはずだ。

遠くから光が迫ってくる。ああ、やっと死ねるのか。
そう思って、瞼を閉じた。世界も何も見えない事に安心する。
安心するのに、何処か残念だった。切望して渇望していた死がすぐ側にあるのに、心から喜べない。どうしてなのかと考えて、納得した。

私は、望んでいたのだ。
先程消えた、最期まで叶わなかった夢。

光の渦に溺れていく。死んでいく事に、叶わなかった願いに、思わず私は笑みを浮かべた。







追請ポンキ



お前に殺されたかった。









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