暦では冬でも春島近くを進んでいるこの船はとても陽気だ。
真夜中でも外に出て宴が出来るくらい暖かな気温で、余計に陽気な声が響く。
甲板には笑い声が溢れていた。
新年を向かえたモビー・ディック号の上では、船員たちが酒を煽り、笑い合い、騒がしく話している。
そんな中、エースは船の隅に座り、騒いでいる船員たちを眺めていた。
その顔には楽しそうな笑みを浮かべており、酒を少しずつ飲んでいる。
目を細めて眺めていると、エースの隣に人が立った。

「主役がこんなとこで何やってんだい」

そう良いながら、マルコは腰を落としエースの隣に座った。

「ん〜?いやなんかさ、見てるのが楽しいっていうか」

エースは楽しそうに答える。
その答えに、マルコは少し驚いた様に目を丸くした。

「いつも騒ぐお前がかい?珍しいこともあるんだねい、腹でも壊したか」

「違ぇよ!」

宴といえば、真っ先に騒ぎ出すのに。
そう言えば、エースは心外だと言う様に声を上げた。
マルコは冗談だよい、と軽く流し、酒に口をつけた。
二人はそのまま喧騒を眺めた。
静かな沈黙が流れる。けれど重くなく、むしろ心地良い沈黙に、二人は身を委ねた。

「おれさ、」

そんな沈黙を破ったのは、エースだった。
マルコは意識だけをそちらに向ける。
エースは前を見ながら喋り出した。

「ガキの頃、生まれてきてよかったのか分からなかったんだ。おれが生まれなければ幸せになれた奴がいっぱいいたんだ」

悪魔だ、生まれてこなきゃよかったんだと言われた奴の血が流れてる。
自分が居たから不幸になった奴なんか山ほどいる。
生まれてきた理由が分からなかった。生きていく理由が分からなかった。
自分の血を呪い、生きる理由を探しながら生きてきた。
だけど、

「おれ、こんな楽しい誕生日初めてだ」

そう言って、エースは泣きそうな顔で笑った。
誕生日なんて、苦痛でしかなかった。
生まれたことの意味を考え、血を憎む。そんな日だった。
だけど、今回は違った。
こんなたくさんの家族に祝われ、たくさんの言葉を貰った。
自分の存在を認められた様な気がした。

「嬉しいもんだな」

泣きそうな顔で、本当に幸せそうに笑う。
マルコは何も言わず、ただエースの言葉を聞いていたが、いきなりエースの頭に手を置くと、グシャグシャ、とエースの髪を思い切り混ぜた。

「いっ!痛ぇ痛ぇ!なんだマルコ!」

頭皮が禿げるじゃねぇか!とマルコに文句を言おうとしたが、エースの頭はマルコの手によってがっちりと固定されていた。頭がミシミシと言っているのは気のせいではないだろう。
本当に何なんだと思っていたら、頭を掴んでいる力が緩み、エースは頭をポンポンと叩かれた。

「エース、生まれてくれてありがとよい」

横から聞こえた声に、泣きそうになった。
マルコが離れていく。
一人残されたエースは頭に手を伸ばし、照れ臭く笑った。
宴の中に帰って行ったマルコに船員たちが気付き、エースを見つけて声を上げた。

「隊長〜〜!何隅っこにいるんですか〜〜〜!!」

「そうだぜエース!こっち来い!!」

「エース〜!誕生日おめでとう〜!!」

隊員たちや仲間たちの声がエースに呼び掛け、その様子にビスタとジョズが静かに笑っている。
船の上の何処からともなく誕生日おめでとうという祝いの言葉が聞こえてきた。

「グララララ!船一番の盛り上げ隊長が休んでんじゃねぇぞ、エース!」

「なんだエース!もう休んでんのか!じゃあこの肉はおれが貰うからな!!」

白ひげもエースに気付いたのか、声を上げる。
マルコの横にいたサッチがエースを煽る様に肉を見せびらかしながら言ってきた。
笑い声や呼びかけが強くなる。その様子に、エースは胸が熱くなるのを感じた。

「休んでねぇよ親父!それからサッチ!その肉はおれのだ!!」

エースはそんな二人に声を荒らげ、腰を上げた。
自分のせいで不幸になった奴なんて山ほどいる。自分のせいで人生が狂った奴なんて山ほどいる。
だけど、この血の繋がりではなく魂の繋がりを大切にする家族といれて幸せなんだ。
今、幸せなんだ。
エースはそのまま走ってサッチに向かってタックルをかました。
甲板はより一層笑い声が溢れた。

空にはぽっかりと月が浮かんでいた。






欣快セリブレイト



初めて心の底から思った。

生まれてきて、よかった。




























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白ひげ海賊団が大好きです!
1月1日、エース誕生日おめでとう!



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