「兄弟って、どんなものですか?」
その言葉に、目の前の兄弟は顔を見合わせた。
「・・・どうしたんだ?いきなり」
兄である涼介さんがそう問いかけて、弟である啓介さんがその隣でうんうん、と頷いている。
その様子を息の合った兄弟だなぁ、と感心しながら俺は答えた。
「俺って一人っ子じゃないですか。だから兄弟ってどんなものかよく分からないんですよ」
涼介さん達は家でもプロジェクトDでも一緒で、違うのは学校くらいでしょ?いつも一緒の二人なら兄弟の事よく分かってるんじゃないかな、と思って。
そう言う俺に、二人は「そーいやーいつも横にいるのが当たり前になってるからなー」と気づいた様に言っていた。
「俺の場合、いつも兄貴が隣にいたからなぁ。いて当たり前っつーか、いなきゃ違和感っつーか。兄貴がいるから安心出来んだよ」
啓介さんはうーん、と考えながら答えてくれた。
涼介さんはそんな啓介さんを微笑みながら見ていたが、啓介さんがそれに気づいて照れながら「兄貴も答えろよ」と涼介さんに言っていた。
「俺か?そうだな・・・。手のかかる奴だったよ、昔から」
「兄貴!」
涼介さんの言葉に啓介さんが声を上げた。言わないでくれ、って顔をしている。
そんな啓介さんを涼介さんはくす、と小さく笑って続けた。
「何をするにも『アニキアニキ』ってついて来てな、一度修学旅行にまでついて来ようとした事もあったよ。やんちゃばかりで俺をハラハラさせる弟だ」
そう言う涼介さんは思い出したのか笑っている。
隣で啓介さんは小さくなっていた。
「・・・昔の話だろ」
「そんな事はない。最近でも勝手に敵のエリアで走ったり、俺のFCに悪戯するじゃないか。それに、」
「あーー!悪かった!すいません!もうしないから止めてくれ!」
まだ例を出そうとする涼介さんを啓介さんは大声で止めさせた。啓介さんの顔が真っ赤だ。涼介さんは楽しそうに笑っていた。
「まぁ、いつまでも子供な可愛い弟だよ」
涼介さんがそう言うと、啓介さんは照れながら「悪かったな、子供で」と呟いていた。
その様子につい笑みがこぼれてしまう。
笑っていたら、啓介さんが俺に若干睨みつけながら言ってきた。
「で、兄弟ってどんな感じか分かったか?」
ぶっきらぼうに言う啓介さんと、静かに微笑んでいる涼介さんを見て、俺は言った。
「とりあえず、兄弟が欲しくなりました」
その言葉にきょとん、とした啓介さんだったが、すぐに何かを思いついたのか俺の肩を叩き、ニッ、と笑った。
「じゃあ俺が藤原の兄貴になってやるよ」
嬉しそうに笑う啓介さん。
いやぁ、俺弟欲しかったんだよ〜とケンタが聞いたら落ち込みそうな事を楽しそうに言っていた。
俺はただその様子をぼー、と見ていたが、ある事に気がついた。
「じゃあ涼介さんも俺の兄貴になるんですか?」
「いや兄貴はダメだ」
「え?」
即答だった。
しかも目がいつになくマジだった。
さっきまでの楽しそうな口調でもなくなっていた。
「いや、でもそういう事になるんじゃ・・・」
「兄貴はダメだ。兄貴は俺の兄貴で、他の誰の兄貴でもないんだ!」
真剣に言う啓介さんに、俺と涼介さんは思わず顔を見合わせて笑った。
何て言うか、
「啓介、お前何だそのジャイアニズム」
まるでがき大将だ。
二人して笑っていたら、啓介さんが少し拗ねだした。
「じゃあさ、兄貴は弟が二人になってもいいのかよ」
唇を突き出し、むすっ、として言う啓介さんはDにいる時とはかなり違っていた。そのギャップが面白い。
涼介さんはその啓介さんの言葉に考えた様で、そうだな、と頷いた。
「お前みたいのが二人もいたら俺が堪えられないな。弟は啓介一人で充分だ」
そう言った涼介さんは啓介さんを愛おしげに見ていて。
似た者兄弟だ、と俺は思って笑った。
専横モナポライズ
じゃあ兄一人と従兄弟一人って事で。