あぁ、どうしたら彼を振り向かせる事が出来るのだろう!

そんな事を考えながら、僕は夜の道を歩く。
彼は僕の事をどう思っているのだろうか。嫌われてはいないと思う。好かれてはいるだろう。でも、その『好き』は僕の小樽くんに対する『好き』ではない。
こんなに僕がアプローチしてるのに、彼はいつも流すか殴るか罵るかで。いつもつれない態度。

「まぁ、そんな所が好きなんだけどね」

それでも、やっぱり寂しいんだよ?彼は分かっているのかな・・・。

「あ〜やってらんねぇ〜。あ〜やるせないぃぃ」

自作の歌を小節気味に歌いながら、僕は道を歩く。
するといきなり道がより暗くなり、僕は後ろに突き飛ばされた。

「いった・・・!」

お尻を摩りながら暗くなった上を見ると、そこにはいかにもコワモテ〜、アッチの仕事してますよ〜って人達が立っていらっしゃいました。

「あぁん?お兄ちゃん、ぶつかっておいてゴメンナサイもねぇのかぁ?」

そのコワモテのお兄さん方が僕を睨みつけてきました。ちょっと、何このベタな展開!てか僕なの!?

「あっ、す、すみません・・・」

僕がそう言うと、お兄さん方はニヤニヤ笑いながら顔を見合わせています。何か、すごく嫌な感じがするんだけど。

「謝られただけじゃ気が済まねぇなぁ」

「え、あ、すみません・・・」

僕にどうしろと!?

「お兄ちゃん、今一人なのかい?」

「へ?あ、はい・・・」

いきなり何を言われたか分からなかった。だって普通の事だったんだもん!

「危ねぇなぁ、こんな人気のない夜道で一人なんて」

「そうそう、例えば俺らみたいな危ない人に襲われちゃうかもよ?」

「お兄ちゃん、美人さんだしさぁ」

ちっとも普通じゃなかった!
お兄さん方がニヤニヤと笑いながら僕に近づいて来る。
僕はそれにお尻を引きずりながら下がる。

「お兄ちゃん、俺ら癒してくれるかい?身体で」

身体で。身体で?
一瞬固まった。
そりゃあ、この星は男しかいないからそこに対して驚きはしない。
でも身体で、ということは今此処でお兄さん方はヤろうと言うことだ。
確かに今考えるとこの道は暗く人気がなく、お兄さん方には調度いいだろう。つまり、僕にとっては最悪だ。

「や、やめっ・・・!」

「お、いいねぇ。抵抗とかされちゃうと俺燃えちゃうなあ!」

抵抗したら逆効果だった。
お兄さん方に囲まれて、僕は道の壁にぶつかった。

「さぁて、逃げらんねぇなぁ」

「気持ち良くさせてやるからよ」

そう言って、お兄さん方は僕の脚を白タイツの上から撫でた。その感覚に肌が粟立つ。

「いい脚してるよなぁ」

「声もいいし、」

「上玉捕まえたな、俺ら」

お兄さん方がいやらしく笑いながら僕の身体を触っていく。
脚から、胸や首などに手が這う。気持ちが、悪い。

「ひっ、は、あ・・・」

手が、僕をまさぐっていく。
小樽くん以外に、触られている。
小樽くん、以外に。
そんなの、嫌だ。
嫌だ、嫌だ!助けて、

「おたるく・・・・・・っ!」

その瞬間、お兄さんAがいきなり倒れた。

「・・・・・・え?」

ぼけっ、とした僕を無視するように、お兄さんBお兄さんCも倒れていく。
ついていけてない僕に聞き慣れた、間違えるはずのない声が聞こえた。

「おい!何やってやがんでぇお前!!」

そう言って僕を怒鳴る小樽くんを見て、倒れたお兄さん方を見て、僕は泣いた。

「おいっ、泣くな、花形泣くなよ!」

小樽くんが慌てている。僕が泣いているから。
でも、涙が止まらない。
そんな僕に小樽くんは視線を合わせて、頭を撫でてくれた。

「恐かっただろ、・・・大丈夫か?」

小樽くんが優しく聞いてくれた。それが嬉しくて、安心してまた泣いてしまった。
僕が泣いている間、小樽くんはずっと撫でてくれた。

「小樽くんは、ずるいね・・・」

ぽつりと呟く。
小樽くんはずるい。いつもは僕に優しくなんてしないのに、こういう時だけは優しくしてくれる。
いつだったか、僕が父さんに連れ帰された時も小樽くんは引き止めた。
優しくなんかしてくれなきゃ、僕は諦められるかもしれないのに、たまに見せる優しさのせいで諦められないじゃないか。ホント、ずるい人。

「何か言ったか?」

小樽くんは僕を覗き込みながら聞いてきた。
僕は「んーん、何もいってないよー」と答えて、腰を上げた。

「帰ろう、小樽くん。心配してるんじゃない?」

そう言って彼の手を取った。
きっとライム達が心配しているだろう。

「・・・もう大丈夫なのか?」

「もっちろん!小樽くんが僕をなでなでしてくれたんだよ!?元気ハツラツーだよ!ありがとー、小樽くん!」

笑って言ったら、小樽くんも笑ってくれて嬉しかった。

「じゃあ帰るか!」

「やったぁ!小樽くんとラブラブ帰り道ぃ!おったるくーん!!」

抱き着こうと思ったらあっさり避けられてしまった。小樽くんのいけずぅ!
前を歩き出していた小樽くんに置いていかれると思ったら、何故か知らないけど身体が前に傾いた。

「え・・・?」

自分の手をよく見たら、小樽くんの手と繋がっていて。
当然、小樽くんが歩き出せば僕も進む訳で。

「小樽くん、これ・・・」

「うるせぇ!」

戸惑いながら聞いたら怒鳴られた。
でも、だって、これ・・・。
すごく、嬉しい。

「・・・今日は暗いからな、はぐれないようにだ!」

僕の沈黙を戸惑いだと思ったのか、小樽くんは答えてくれた。
普段ならありえない、小樽くんの温もりがすぐそこにある。
優しくして欲しい時には、優しくしてくれないのに。

「・・・ずるすぎだよ」

とりあえず、今だけは僕一人の温もりを感じよう。






恋空ディスアネスト



ずるくて人の気持ちを考えなくて、でも優しい君が大好きなんだ。














(あ、なんであんな所にいたのー?)(・・・・・・・・・・・・散歩)



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