12月下旬。
それは十中八九、クリスマスを思い浮かべるはずだ。
神様の誕生日である前夜にピークを向かえ、本来の意味を忘れかけられているイベント。
恋人がいれば甘い夜になるし、片想いなら何とか一緒に過ごせないかと奮闘する。そんな特別な日である。


普段全くもってそういうイベントに興味がなく、むしろ嫌がらせに走る俺だが、今年は違う。
何故なら絶賛片想い中だからだ。
キャラじゃないとは分かっている、しかし年に一度のイベント。
キャラもプライドも放り投げ、俺は今、何とか一緒に過ごせないかとアプローチをしまくり中だ。



「隊長〜、今年のクリスマスはどうすんだぁ?」

勇気を持って言えた言葉は、何時も通りどうでもよさそうな言葉。
何でこんな言葉しか言えないのか、激しく自己嫌悪に陥る。可愛く言うのは無理でも、もっと言い方があるだろう!
何で熱い顔や煩い鼓動とかを少しでも伝わるような言い方をしないんだ。普段の飄々とした自分が遠く感じた。

「そうでありますなぁ。今年は何ケーキにしようかな〜」

しかし、全てが俺の所為じゃないはずだ。
何でそんな返しなんだよ!確かに俺もそういう誘ってます的な雰囲気を出してはなかったけど、何でケーキに行っちゃうかねぇ!?日頃の行いの所為か?俺の行いが悪いのか?普段の俺を絞めてやりたい。

「あー、俺はショートケーキよりチョコレートケーキがいいなぁ」

そんな返しをされるから、俺はそれ以上言えずにごまかしてしまう。

今まで「そういやぁクリスマスか」から始まって、「暇か」「クリスマスに何かするのか」といろいろ聞いてきたが、「そうでありますなぁ」「今?暇だよーん」「クリスマス?今んとこ決めてないなぁ」と、どれも俺の思い描いていた答えとは違うものが返ってきた。
むしろここまでされると、わざと違う答えを返して俺を避けているのではと思ってしまう。

「じゃあ今年はチョコレートケーキにするであります。上のチョコとサンタは我輩が頂くでありますよー!」

いや、だけど対応は何時も通りだし、避けてはいないはずだ。
俺の聞き方が悪いんだ。そうだ、もっとストレートに、直球勝負にしなくては。隊長はズレてるから分からないだけかもしれないし。
そうだ、ストレートに。行け、行くんだ俺ぇ!

「た、隊長!」

「んー?クルルもチョコとサンタが欲しいの?でもこればっかりは譲れないであります!どうしてもと言うならジャンケンで」

行ったぁあ!!だが綺麗に逸らされたぁ!!

「・・・チョコもサンタもいらねぇよ」

「ゲロ?じゃあ何ー?」

首を傾げて、隊長が聞いてくる。不思議そうな顔が俺を見ている。くそ、何か泣きそうだ。
しかし聞いてくれている。言うチャンスは今だ。言え、言うんだ俺。
だが、そう意識してしまうと口が開かない。顔が熱い。心臓少し黙れ。ああもう喉もカラカラだ。
俺は何とかカラカラに渇いた口を開いた。

「・・・隊長」

「うん」

「クリスマスさ、」

「クリスマス?」

「クリスマス・・・」

「クリスマス」

一緒に過ごさねぇ?
そう言えばいいだけだろ、何で言えないんだよ俺!何だよさっきからクリスマスクリスマスって!てか、隊長も察してくれよぉ!
そう内心八つ当たりしていたら、隊長はそうだ、と何かを思い出したように手を叩いた。

「クルルさぁ、クリスマス何処か行きたい場所ある?」

「・・・・・・・・・は?」

それは小隊でって事ですか?それともオススメスポットか何かですか?
今までの緊張といきなりの質問で俺の頭が急ブレーキをかけている間に、隊長は笑いながら話を続けていた。

「いやさー、我輩はクルルと一緒なら家でのんびりクリスマスでもいいかなって思ってたんだけど、クルル今年は何か行きたい場所とかやりたい事があるんでしょ?」

だからクリスマスについていっぱい聞いてきたんでしょ?
軽く笑いながら言う隊長に、俺は頭の中をハテナでいっぱいだ。
え?一緒って小隊のメンバーで?でも今のニュアンスは二人きりだ。しかも言い方的に最初っから俺と過ごす事前提?え、マジで?
てか今まで俺が頑張ってたアプローチはそんな風に思われてたのかよ。俺あんなに頑張ってたのに、骨折り損のくたびれ儲け?
何だかこんがらがってきた。とりあえず、聞いておかなくてはいけないのは一つだ。

「・・・隊長、俺に言ったかい?」

「あれ?周知の事実、暗黙の了解、もしくは以心伝心?言わなくても分かってると思ってたんだけどー」

隊長は当たり前かのように言う。本当、頑張ってた俺は何なんだ。

「でも、うん。じゃあ改めて」

本日二回目の自己嫌悪に陥ってると、隊長は一人納得して俺の手を取った。

「・・・あ?」

それに俺は訝しげに顔を上げる。そこには穏やかに笑っている隊長の顔があった。
穏やかに、暖かく、隊長は笑う。

「クルル、俺と一緒にクリスマス過ごして下さい」

「クッ!」

その表情に、台詞に、思わず変な声が出た。
だって、何だか、・・・・・・プロポーズされているみたいで。
顔が熱い。心臓も煩い。今までのが比じゃない程、俺の全てが煩かった。
きっと今の俺は顔が真っ赤になっている。繋がれている手も異様に熱いのはバレているはずだ。
それでも、俺が言いたくて言いたくて堪らなかった台詞をあっさりと、しかも余裕を持って言われたのは悔しかった。
嬉しさはその何十倍だったけど。

だから、目の前で笑っている隊長に言ってやった。
途切れ途切れで、強がりだってすぐ分かるもので、言わなきゃよかったって後悔したけど。
隊長も嬉しそうに笑ってくれたから、まぁいいか。


「サ、ンタ・・・くれる、ならな」





聖夜エレクトリック



最高の聖夜を。



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