傍らに ごろり と転がるのは
かさかさに
渇いてしまった林檎なのではないか、と
生温い水に沈みつつ思いながら
まるで聖人にでもなったつもりで
恰好付けた哲学めく計算式は
げらげらげら、と
嘲笑われることにすら酔っている
(私は、私が、わたしだけは、)
(特別?/別物?/唯一無二?)
「アア、馬鹿じゃないのかしら」
「ええ、存じて居りましたとも」
「お前は彼奴の模倣でありやがります」
なんて
錯乱する前にどうか どうか
瞼を降ろさせて下さいませんか
きれいなこころは
亡くしてしまったのです が
何故だか不思議と
それが正解なのかもしれないです
「きみがわるい」
ただ、謝れば良いのでしょうか
「きみがわるい」
膝を、抱えて泣くのでしょうか
『母さん 元気にしてますか。
私は昨日も今日も恐らく明日も
足下のありふれたコンクリイトを
見えないフリして歩くのでしょう。』
虫も泣きやしない丑三つ時に
空っぽうのバスタブの内にて
眠りながらの夢に御座います
(おやすみ、)
11秋/部誌掲載
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