「今日は晴れてよかったな」
買ったばかりのスパイクを片手に商店街を抜ける。ここ数日の台風による悪天候で体は少しなまっているような気がした。また3日間くらい晴天が続くらしい。サッカーの練習ができるなと、隣を歩く鬼道が笑っている。
蝉の声が喧しくそして少し切なく胸に響く。夏の夕暮れはすこしいつもセンチメンタルだ。
「イナズマジャパンの頃、」
今日の鬼道はいつもより少しよく喋る。夕焼けのオレンジがゴーグルに反射してチカチカしている。
「お前の背番号は8番だったな」
そうだなぁと返す。あほらしくなるくらい平和ボケした帰り道。老人の会話かよって思うくらい淡々と言葉を交える。鬼道のゴーグルの奥は見えない。口元はすこし笑っている。鬼道の持っているサッカーボールは少しだけ汚れていた。
「お前の季節が終わるな」
「なんだよそれ」
鬼道はクツクツと面白そうに笑った。勝手に終わらせるんじゃねえよ。でも鬼道が楽しそうだから、いいや。
今日は8月の最後の日だ。夕焼けはオレンジ色。天気は晴れ。俺は新しいスパイクを買った。明日からまた俺は帝国で、鬼道は雷門でサッカー。夏の終わり。台風のせいでたまに練習ができなくなる。そんな夏の終わり。鬼道曰く、俺の月が終わる日。
「そうしたらさぁ、鬼道くんの月はずっと来ないよな」
「それもそうだなぁ」
残念だなぁと笑う鬼道はどこも残念そうじゃない。河川敷が見えてくるとよく知ってる背中達がサッカーボールを追いかけていた。明日もまた晴れるから。8月は終わるけど。俺達のサッカーはずっと続くから。なんにも寂しくなんてないよ。






「8月」が終わる日。















ツイッターでお世話になったワンドロさんが今月いっぱいで終わってしまうので感謝の意を込めて短文を。平和なサッカー生活に感謝。
8月が終わる私自身の悲しみを形に残したかった。

2016/08/31
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