どこにでもある川の脇。子供もいない暑い公園に五月蝿いほどの蝉の声が降りしきる。夏休みも半ばに差し掛かった8月。右斜め後ろを歩く鬼道の視線をうなじにジリジリと、まるで今の西日のようにジリジリと感じて、川沿いを歩く。小声で何か呟いても聞こえないような蝉の声の中。西日で右の頬が熱い。けれどもあまり不快感もなく歩く。歩く。
「不動、ーーー」
鬼道が何か言った。蝉のせいで聞こえない振りをした。川沿いは除草作業のせいですっかり干からびていて、どこからか流れてきた壊れた目覚まし時計のおもちゃが乾いた泥で汚れているのが顕になっていた。聞こえないふりをして、そのふりに気づかれてることに気づいたままで、俺達は川沿いを歩く。歩く。
もうすぐ曲がり道。公園を過ぎたら蝉の声は遠くなった。
「不動、」
聞こえないふりはもうできない。夏休みが終わる。俺達の夏休みが終わる。








川辺







を歩くセンチメンタル中学生。

2016/08/17
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