※年齢操作
この部屋の荒れようを、鬼道は叱るのだろう。以前にこの部屋の棚がひっくり返ったのは俺が餓鬼臭い癇癪起こして荒れた時だ。同棲を始めて二週間目の日の事だ。それはそれは、素晴らしく愚かな争い事。
今朝からなんとなく苛々していた。そこに理由はなかった。鬼道は仕事に出掛けている。俺はやけに痛む頭を押さえて、軽い朝食を済ませた。寒々しい曇天の下ベランダに出て煙草に火を点ける。吐き出す紫煙を教えたのは鬼道だ。
それから皿洗いも洗濯も掃除もせずに埃臭いベッドに寝転ぶ。手始めにティッシュの箱をズタズタに裂いてみた。中身が飛び散った。ほんの僅か、あの紫煙のように頼りない程度に満たされた欲求もすぐ渇く。見渡す部屋には何も、探し物は見当たらない。
得体の知れない焦燥感に当てられて、ただただ精神異常を来したかのように部屋中をひっくり返した。布団を引っ掻いた。綿がどろりと出てきたけれど、白いだけだ。此処には無い。ベッドをずらした。埃が溜まってる。棚を動かした。写真立てを割った。散った硝子で足を切った。赤。空の灰色。綿。白。
コントラスト。乾いた心は砕け散って。嵐の後の、妙な虚無感に倒れ込む。床がチクチク、チクチク。硝子がいたい。
乾いてしまったんだ。どうして。いつから。鬼道はまだ帰らないの。気が付くと辺りは暗かった。星が控え目に輝いている。街はまだ明るい。心に開いた穴は予想外に大きくて、感情が全部飲み込まれてしまっていたんだ。だから。
俺が探してたのは。

鬼道、言い訳を聞いてくれよ。俺、探してたんだ。泣くための理由が欲しかったんだ。




過去サイトより再掲

2016/07/07
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