※高校生。とても捏造。山も落ちも意味もない。


鬼道有人も人間だ。どこにでもいる高校生に過ぎない。例え勉強がすべて完璧に出来ても、世界のサッカー大会で天才司令塔ともてはやされようとも。鬼道有人もどこにでもいる高校生だから本当は少しだけ食べ物の好き嫌いもある。あるけれど見せないだけだ。鬼道有人もどこにでもいる高校生だから、まあ、きっと誰もイメージできないだろうが、本当はブラックコーヒーがそんなに好きじゃない。
鬼道邸にいつもの如くお邪魔して2人で勉強していた休日の昼過ぎ。空調で心地よい温度に保たれたこの部屋も、カーテンから漏れる日差しで夏の匂いが漂っている。
「そういえば、バイト辞めちまったわ」
ペンを動かしながら告げると、鬼道くんはふと顔を上げて、それからまたノートに視線を落として一言、「そうか」と言った。その話題はそのまま発展せずに沈黙が部屋を覆った。
3日間だけ喫茶店で働いてた。気のいいじいさんが経営するいい店だった。辞めた理由は仕事が柄に合わなかったからだ。応募したのも寮から近いからってだけだし、これは別に仕方ない。まあそんなこともあるよな。ただ俺はこの3日間でアイスカフェオレの綺麗な入れ方だけ知った。
「休憩。鬼道くん、キッチン貸して」
「あ、ああ。構わない」
専門的なことなんかは知らないけど、料理の腕には自信があった。でも盛り付けとか、そんなに気にしたことなかった。だから喫茶店で、傷一つ無い綺麗なグラスの中でミルクとコーヒーがくっきり二層になっている飲み物を見た時、ちょっとだけ感動してしまった。はは、ちょっとガキみたいだ。
鬼道くんの家のコーヒーは、よくわかんないけど多分いいヤツ。濃いめに淹れたコーヒーに氷を入れて少し冷やす。コーヒーのいい匂いが漂うキッチンを勝手にあれこれ使っていると、後ろにいる鬼道くんが少し首をかしげた。
「コーヒーか?」
「ん、そうだな。コーヒーだな」
なんにも関心のないみたいに鬼道くんは「ふぅん」と言った。それから気を利かせてか、大きい冷蔵庫から洒落たアイスケーキを出してきた。ちょうど2人分くらいの大きさで、バニラアイスにチョコクリームの乗ってるやつ。すごく甘ったるそうだ。
「それ、食っていいの、勝手に」
「構わないぞ。俺が買ってきたんだ」
「アハハ、可愛い味覚だな」
思わず笑うと鬼道くんもちょっと笑った。平和だねぇ。
俺は勝手に食器棚を開けて、一番上の段にあったお洒落なグラスを2つとった。小振りの氷を3つくらいずついれる。それからミルクを(多分これも安っちいやつじゃない)グラスの壁に跳ねないようにゆっくり注ぐ。3分の1くらいまで注いだら、さっき別のグラスで冷やしておいた美味しい淹れたてのアイスコーヒーを、マドラーを使って氷の上からゆっくり注ぐ。ミルクの表面に直接当てないようにだ。
「ほう、綺麗なもんだな」
ヨーロピアン調の細工のある皿にアイスケーキとフォークを乗せてから、鬼道くんが感心したようにいった。ちょっとだけ得意な気持ちになる。「まぁな」とだけ返して、さぁ、出来上がり。
「オシャレだろ? 優雅なコーヒータイムにしようぜ」
鬼道くんはなんだか俺の入れたアイスカフェオレを気に入ってくれそうだ。鬼道くんのお口にもきっと合うと思うぜ。ブラックコーヒーなんて、鬼道くんには似合わないしな。そういう俺も、本当はコーラが好きなんだけど。今日みたいな緩やかな夏の午後にはアイスカフェオレがいいんじゃねーの。







アイスカフェオレの作り方













ただの年相応な2人





2016/09/02
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