王シリーズ最後の回、“名前王”の撮影を終えたのがつい先程のこと。その際、撮影直後に私が落とした“彼氏と別れました”発言によってこの状況が作り出されている。メイン直後のサブ撮影はそう珍しくないけれど、この面子でこの空気は中々お目に掛からない。唯一後から来た岩泉だけは状況が掴めていないようで、何事だと言わんばかりに怪訝な顔で首を捻っている。
「これサブのカメラ回ってるよな?何の撮影だ?」
「……名前から重大発表があるらしい」
「は??重大発表??」
なんだそれ?と黒尾に向けられていた視線がこちらへと移される。重大発表って、そんな大袈裟なことじゃないだろうに。「“重大”なんかじゃないから」と呆れ混じりに零せば、「重大だろうが!」「名前が独り身軍団の仲間入りしたんだぞ!?」と声を張り上げた黒尾と木兎の台詞に、は、と岩泉が目を丸くさせた。
「独り身軍団の仲間入りって……」
「別れたそうですよ、彼氏さんと」
「はあ!?」
赤葦の説明に驚きの声をあげた岩泉。「なんでそんな急
に、」と見開いた目で見てくる岩泉に、仕方なく口を動かすことに。
『急っていうか……実際別れたのは二週間前なんだけど、』
「二週間前???」
「つまりこの二週間、俺たちには黙ってたってことかよ?」
『あんた達に話すイコール、動画になるってことでしょ?動画にするなら、自分の気持ちが落ち着いてから話した方がいいかと思って』
「……それって、名前さん的には別れたなかったことですか?」
少し言いにくそうに尋ねてきた治に少しだけ眉を下げる。
彼とは、付き合ってもうすぐ三年になろうとしていた。友達の紹介が切っ掛けで始まった交際だったけれど、最近は私が忙しさにかまけたせいで、会う時間がめっきり少なくなっていた。彼の優しさに甘えていなかったと言えば嘘になる。