青春 | ナノ





僕は今、秀に呼ばれたので、彼の家に遊びに来ている。
なのに呼び出した張本人の秀はなぜか、自分のベッドの上で寝息をたてて寝ていた。


「ちょっと秀、自分で呼んでおいてなんで寝てるの?」
「んー…」
「しゅーうー」
「あと5分…」
「なに言ってるの、ほら、起きて!」
「…すー…」

ゆすっても声をかけても秀が起きないので、僕はもう諦めることにして、秀の本棚から漫画を何冊か取り出した。




漫画を二冊ほど読み終わってしまった。秀はまだ寝てる。

(そんな無防備に寝ないでよ、見る度にドキッてするじゃんか。)

なんて、ちょっと変態っぽいことを考えながら、秀の寝顔を見つめていると、彼の眉間にしわが寄った。

「あ…」

起きるかな、と思って軽く揺さぶると、秀の目蓋がゆっくり開いた。

「ん…?」
「秀、起きた?」
「尋…?」
「そうだよ。秀が呼んだんでしょ?」
「…尋ー、」

秀は寝ぼけているのか、僕の名前を呼んで、そのまま腕をぐいっと引っ張って僕を抱き締めてきた。

「っ!?」
「ぎゅうー…」
「ちょ、秀?寝惚けてるの!?」
「…尋、」



一瞬の出来事だった。
秀の唇が、僕の唇に重なった。ホントに一瞬だけだったけど、確かに秀にキスをされた。



(僕は無言で秀を見つめた。)
(秀も何も言わずにただ僕を見つめていた。)
120221

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