俺らはいつも通り、生徒会室で昼休みを過ごしていた。 尋は秀の隣で幸せそうに笑っていて、今日の昼休みも平穏に終わると思っていた。
でも、違った。
堀と仙石が、幼馴染みならではの会話をしていて、秀がそれをボーッと見つめながら、ぽつりとなにかを呟いた。
「女の子の幼馴染みが欲しかった」
俺の位置からは何て言ったのか聞こえなかったけど、明らかに尋の表情が強ばっていた。
「おい、秀。今何て言った?俺聞こえなかったんだけど」 「女の子の幼馴染みが欲しかった!」
今度はきちんと聞こえた。が、聞いて一瞬で後悔した。
(おい、俺…尋に確認みたいにもう一回同じこと聞かせてどうすんだよ!しかも、あんな、残酷な…)
尋はといえば、秀の隣で今にも泣きそうに顔を歪めていた。 俺は、さりげなく尋に近づいて、秀に気付かれないように背中を撫でた。
「んだよ、秀。俺らじゃ不満か。」 「朝、起こしに来てほしい」 「尋と俺がたまに起こしてやってんじゃん。」 「いや…尋はともかく朝起きてから石川の顔見ても嬉しくねーし」 「尋は?」 「ん?尋だったら癒される」
秀のその言葉に、尋は肩を揺らし、パッと顔をあげた。 (これは…立ち直ったか?)
「でもやっぱり、女の子の柔らかさというか…ねぇ?欲しいじゃん!」 「勝手に言ってろ!」 (秀のアホがあああ!!)
ぺしんと秀の頭を一度はたいてから尋を見れば、また俯いてしまっていた。 大丈夫か、と小声で話しかけて覗き込めば、尋は申し訳なさそうに眉を下げ、大丈夫だよ、と答えた。 (大丈夫って顔してねぇんだよ、お前は)
とりあえずなんか文句を言っている秀をもう一回軽くはたいてから、尋の頭を撫でた。
(女の子になりたかった、なんて) (そんなこと思ってんだろうな。) (秀には悪いが、あと5回くらい) (殴ってしまいたいと思った。) 111112
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