青春 | ナノ




ある日の放課後、僕はトオルと須田の手を掴んで、誰かに見られる前に空き教室に連れ込んでいた。

「で、どうしたの?尋。」
「二人に折り入って相談があるのですが…」
「相談…?」
「実は…」

秀が好きだと言うことを話した。
最初は二人とも驚いていたけど、僕の気持ちが本物だとわかったのか、きちんと話を聞いてくれた。

「そっか、尋は秀が好きだったんだ」
「どうりで。女の子に告白されても、付き合わないもんな、尋は。」
「あ、でもそれは、相手のことをよく知らなかったりするからで…」
「え、何このいい子。俺告白されて彼女いなかったら付き合っちゃうわ」

須田はモテるからね、なんて言ってたら、トオルがはぁー、と深いため息をついた。

「ったく、贅沢だよなー…俺なんか告白とかされねー」
「トオルには吉川がいるからだよ。ね、須田」
「うん、石川は意外にモテてるよ?背高いし気が利くから。でも吉川さんがいるからねー。」
「吉川、ね…」

遠くを見ながら苦笑いをするトオルを見て、また吉川と何かあったのかな、と考えを巡らせていると、須田がぎゅうと抱き締めてきた。

「どうしたの?須田」
「いや、こんなに可愛い尋が井浦をねぇ、と思って。」
「確かに。秀には勿体ないよな。」
「そ、そんなことないよ!」
「ぶっちゃけ井浦のどこが好きなの?」

核心をついた質問をされ、顔に熱が集まる。

「どこって聞かれると、困る、かも。…秀の全部が好きなんだ。」
「全部、ねぇ…」
「…この尋を秀に見せてやりてぇよ。」
「え?」
「だって今の尋、顔真っ赤で、可愛いんだもん」

可愛い、なんてよく言われてるのに(不本意だけど)何故だかとても恥ずかしくなった。


「ま、頑張れよ。尋。」
「俺たちは、いつでも尋の味方だからね!井浦に泣かされたらすぐ言うんだよ?」
「俺らで秀とっちめてやるから。」
「…へへ、二人とも、ありがとう」




(二人に相談したおかげか、)
(なんだか少しだけ)
(心が軽くなったような気がした。)
111102


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