私は自殺しようとした。
もう風に身を委ねて、さっさと落ちてしまおう。そう思っていた。
そしたら、いきなり、ぐんっ、と引っ張られて、屋上の床に倒れ込んだ。
はずなのに、痛くないから下を見てみれば、嫌われてると思っていた明音が、私の下敷きになっていた。
「ったぁ…あ、大丈夫?詩織」
「…明音?なんで…」
「なんでって…向こうの窓から外見たら詩織が屋上にいて…嫌な予感がしたから来てみたら…ホントに飛び降りようとしてるんだもん。ビックリだよ」
それを聞いて、少し安心した。
明音は、私のことを心配して来てくれた。
もしかしたら、嫌われてないかもしれない、と。
そう思ったら目蓋の裏側が熱くなった。
「…明音は、私のこと、嫌いになったんじゃないの?」
「嫌い?なんで?…僕は、詩織のこと、今でも大好きです。でも、詩織が嫌なら、近付くのはやめようと思ったんです。」
「…じゃあ…」
私は、嫌われてなかったんだね。
そう言おうと口を開きかけたとき、全身がふわっとした感触に包まれた。
「でも、やっぱり無理だったよ。僕、詩織がホントに大好きで、離れてるのは苦しいよ。」
「明音…」
涙が溢れた。
そして私は、明音の身体を、ぎゅっと抱き締め返す。明音は一瞬ピクッと動いたあと、ゆっくりと口を開いた。
「詩織…今更こんなこというの、恥ずかしいんだけど…好きだよ。僕と、付き合ってください。」
「明音…私もっ…、明音が好きっ…」
君 を 愛 し て も
(いいのですか?)
(そう涙で掠れた声で彼に聞くと)
(返事のかわりにふわりと微笑んでくれた)
110320
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