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梓馬さんと結婚してから、1ヶ月ほど経った。私は進級して、受験の年になった。
梓馬さんは星奏学院大学に入学し、…ますます女の子にモテまくってます。
彼女…じゃない、妻の私としては誇らしいけど、いい気分ではないです。



「名前、良いの?柚木先輩あんなにモテてるけど…」
「香穂ちゃん…。…良いも何も、モテちゃうのは仕方ないよ…。梓馬さんカッコいいもん…それに私だけじゃ止めようが無いし…」
「それはそうだけど…」

そう。仕方ないんです。
梓馬さんは昔からモテるから、今さらどうしようもないのです。
それに、ヤキモチなんか妬いてたら…、身が持たないもん。

「でも、私の梓馬さんへの気持ちはファンの子には絶対に負けないよ。幼稚園の頃から、梓馬さんが大好きだったんだから。」
「名前…そうだね」
「それに…私はこんなのでも梓馬さんの奥さんなんだもん、自信を持たなきゃ!」
「そうだ!自信持って良いんだよ!」

「何話してるの?」

「ぅきゃあ!?」
「ゆ、柚木先輩…」

いきなり梓馬さんが後ろから声をかけてきた。

「梓馬さん、もう良いんですか?」
「あぁ、お待たせ名前。…やぁ日野さん。名前に付き合って待っててもらって悪かったね。お詫びに家まで送るよ」
梓馬さんは胡散臭い笑顔で言った。

「お気遣いどうも、でも大丈夫です。私は柚木先輩じゃなく和樹先輩を待ってたので。」
「お前…言うようになったじゃないか」
そう言い梓馬さんは香穂ちゃんの顎をくいっと持ち上げた。
「っ…!?」
それを見た私の頭は引っ掻き回されたように、ぐちゃぐちゃになった。

「なにするんですか柚木先輩。」
「あー!!?柚木!香穂ちゃんになにしてんの!」
「やぁ火原。お疲れさま。」
「そっちもお疲れさま!…じゃなくて、何香穂ちゃんに手出してんのさ!」
「ごめんごめん、ちょっとからかっただけだよ」

それから5分くらい、梓馬さんと火原先輩がやりとりをして、お互い別れた。


「名前?どうかしたかい?」
「…いえ、なんでもないです。」
「…本当に?」
「…ご自分の胸に手を宛てて考えれば、わかると思いますよ。」

私は少し突き放したように言った。

「名前…ヤキモチ妬いてるのか?」
「!」
「さっき女の子たちに囲まれてたから?」
「…それも、ありますけど…」

確かにそれもあるけど、そこはもう慣れている。梓馬さんが本気で相手にしないのもわかっているから。

「…あぁ、日野のことか」

図星を当てられ思わず顔を伏せる。

「名前、ごめんね」
「…え?」
「いつも不安だったよね」

梓馬さんは申し訳なさそうに眉を下げ、私の肩を抱いた。

「これからは、なるべく気を付ける。名前を長時間待たせるようなこと、したくないから、女の子が言い寄ってきてもちゃんと断る。…そしたら君は安心できる?」
「…はい!」

梓馬さんのその言葉が嬉しかった。
嬉しくて、私はつい、ぎゅうっと梓馬さんに抱きついた。梓馬さんは一瞬驚いたようにビクッと動いたけど、すぐにふわっと抱き締めて、頭を撫でてくれた。




新しい春
(私の長年の不安が拭われた)
(とても心地よい春だった)





110515



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