「柚木先輩、卒業おめでとうございます。」
「ありがとう、君もこれからも頑張ってね」
後輩一人一人にお礼を言う梓馬さん。
「柚木様、また大学でもよろしくお願いします。」
「うん、こちらこそよろしく。」
同級生に挨拶をする梓馬さん。
「柚木、大学でも頑張れよ。」
「ありがとうございます、先生。ご期待に添えるよう、努力します。」
先生にも挨拶をする梓馬さん。
私はといえば、そんな梓馬さんに待ちぼうけを食らわされて、彼の後ろでぼうっとそんな光景を見つめていた。
柚木家と同じ位の塚本家に生まれた私は、物心が付く前から梓馬さんの許嫁だった。
中学までは優しくしてくれる梓馬さんが大好きだった。
だけど高校にあがった時に知った、本当の梓馬さんを見たとき、いっきに夢が崩れた気がした。
だけどそんな梓馬さんを見ていくうちに、やっぱり梓馬さんが大好きなんだと何度も思い知らされた。
そして今日、彼は卒業した。
彼の卒業が何を意味するか。
それは…―
「名前、ごめん。待たせたね。」
「あ、…ホントですよ!30分くらい待ってたんですからね!」
「…お前、俺のこと待ってる時間好きなんだろう?だったら良いじゃないか。」
「っ…だけど…」
「口答えしないの。」
反論しようとしたが、彼が人差し指を私の唇に当ててそれを制した。
「さ、帰るよ。お婆様がお前と話がしたいらしい。多分お前の両親も来ると思うから急がなきゃね。」
「あ、はいっ」
これから、私の生活が一気に変化を遂げる。
卒業
(梓馬さんが卒業、それは)
(私の日常が変わることを意味するのだ。)
110123
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