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國府田千早



「千早さん…いないの…?」
部屋の中を見回しても、見当たらない彼の姿。
私はどうしようもなく不安になり、ベッドから降りて、彼を探しに部屋を出た。

「千早さーん…?どこー?」

私の震えて掠れた声が、しん、とした家の中に静かに響く。

「ホントにいなくなっちゃったの…?」

すると、キッチンからガタッと音がした。
「千早さんかな…?」
私はゆっくりと慎重にキッチンに近付く。彼は、すぐに私に気付き、目を数回瞬かせた。

「おや、名前。起こしてしまったかい?」
「あ、いえ……千早さんは何をしてるんですか?」
「目が覚めてしまってね。だから明日の朝食の下ごしらえでもしようかと思って。」
「じゃあ、手伝います。」

私は少しでも千早さんと一緒にいたくて、千早さんの手伝いをすることにした。

「おや、僕と離れたくないのかい?」
「…うん…」
「…今日はやけに素直だね。何かあったのかい?」
「…千早さんに置いていかれる夢を見たの。」
「おやおや……それは怖かったね。」
千早さんは私を抱き締め、頭を優しく撫でてくれた。
「うぅー…千早さーん…」
「よしよし。」
私は甘えるように、千早さんにぎゅっと抱きついて、彼の胸に顔を埋めた。


「名前。これだけは覚えておいてほしいんだ。」
「なんですか?」
「僕は、君を置いていくようなことは、絶対にしないよ。」
「…ありがとうございます。」
私は、千早さんの想いに精一杯答えるように微笑んだ。

「いやいや、僕が離れたくないだけだからね。」
「私も千早さんと離れたくないです。」
「じゃあ、僕たちはもう離れないね。」
「ふふ、そうですねっ!」







110629


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