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「先生なんて、大嫌い」




涙に濡れた瞳で言われた。
「嫌い」なんて、言われ慣れてる、言われ慣れてる…はず…なのに、何故か胸が痛かった。


「安田先生、元気ないですね。何かありました?」
「あぁ…中峰先生…。いえ、なんでもないです。」
「…今、目の前を女生徒が通りました。いつもの貴方なら、真っ先に挨拶すると思ったのですが…?」

見ると中峰先生はにやにやしていた。なんでこの人には隠し事が出来ないんだ…。

「…苗字さんのことですか?」
「…そうです。」
「何があったんです?」

一瞬、話すのを躊躇った。「そんなことで」なんて笑われると思ったから。だけど中峰先生はそんなこと言わないと信じて、話した。

「彼女に、嫌いって言われたんです。」
「やっぱり。そんなことだろうと思いました。」

言い方こそ中峰先生らしく柔らかいが、俺の胸にはグサッとくるような一言だった。

「そんな言い方っ…」
「あぁ、くだらないって言ってるわけではないんです。」
「は?」
中峰先生が予想外なこと言うから間抜けな声を出してしまった。

「安田先生。苗字さんは貴方のこと、今でも大好きですよ。ただ、好きすぎてそんなこと言ってしまったんです。」
「…というと?」
「貴方の女生徒好きが仇になりましたね。彼女はそれに嫉妬したんです。」

それを言われて俺はハッとした。
薄々気付いていたんだ。俺は、この性格を何とかしなきゃいけないって、名前のためにも。
名前のことはすっごい大切で、大事にしたいと思ってる。だけど、この性格故に彼女を不安にさせている。
話しかけるのを極力少なくしようとしていたのに、癖付いているのか、またやってしまう。
そんなだらしない俺のせいで彼女を傷付けてしまった。

「そういえば、名前さんは今日は一人で日直でしたっけ。」
中峰先生を見ると、「行ってらっしゃい」とでも言うように、ウインクされた。

「っ…ありがとうございます、中峰先生!」
俺は職員室を飛び出して、彼女のいる教室まで走った。

教室に着いてドアを勢いよく開ける。
教室にはドアが開いたのに気付いて、こちらを見ている名前がいた。

「先生…?」
「名前っ…!」
俺は彼女を思いっきり抱き締めた。
「名前、ごめん。俺、この性格っ…直すからっ…時間かかるかもしれないけど、直すから、だからっ…」
「先生、そんな泣きそうな顔しないで?」
気づかなかった。俺は今、泣きそうな顔をしていたのか。

「先生、私こそごめんね。嫌いなわけないじゃん。嫌いになれるわけ、ないよ。」
「名前…。」
「でも、私のために先生が女癖直すって言ってくれて嬉しい。」
「…俺、頑張るから。またこんなことにならないように…」
「うん、ありがと、先生。」

名前はそう言って俺の頬にキスしてきたから、俺はなんてこいつに弱いんだ、と思いつつ、唇にキスを落とした。






嫉妬と愛情
(一回くらいは嫉妬で喧嘩もいいか)
(なんて思う俺は相当アホなんだろう)
(愛故の嫉妬、ってね)











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咲様、リクエストありがとうございます!安田で切甘、嫉妬ネタということで…中峰先生大活躍な話になってしまいました…すみません。
そしてオチが無理矢理過ぎて泣けてきました。
もし気に入らなかった場合書き直しますのでお申し付けください!
では、リクエストありがとうございました!

冴咲
101229


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