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※男子修道院だけど女の子がいるよ!






私が17のとき、両親もまだ小学生だった双子の妹たちも、全て悪魔に殺され、自暴自棄に毎日を過ごしていた私に、声をかけてきた変な奴がいた。


「よぅ、お前、一人か?」

「…そうだけど」

「魍魎(コイツら)、見えてるんだろ?」

「…なんなんだよ、お前…」

「なぁ、強くなりたくないか?」




そう言われてソイツの家に連れて帰られた。そこには小学生の双子がいて、ふと妹たちのことが頭を過った。
無邪気に私にまとわりついてくるその姿が、妹たちと重なって、吐き気がしたのを覚えている。

ソイツの名は、藤本獅郎。双子たちは奥村燐と雪男。それぞれが自己紹介を終えて、双子は期待に満ちた瞳でこっちを見つめてきた。

「…なんだよ。」

「!!あ、貴方の名前もっ…教えて…ください…」

睨み返せば、ビクッと肩を揺らし、ビビりながら雪男がそう言ってきた。
少し躊躇い、獅郎の方に視線を移せば、すごい優しい顔で私を見つめていた。その瞳に促され、私は名前だけをぽつりと呟いた。






それから、私はこの修道院で、家政婦として住み込みで働かせて貰うことになった。みんなのご飯を作ったり、掃除や洗濯をしたりしながら、燐に料理を教え込んだりもしていた。

そして、祓魔塾にも行かせてもらい、強くなるために、毎日勉強していた。







「おい、飯はまだか?」

「うっさいなあ…今作ってるっつの!!ていうか後ろから抱き締めんのやめてよ、動き辛い。」

「んだよ連れねーな。嬉しいくせに」

「なっ…う、嬉しくなんか!」

「…おい…俺らの前でイチャついてんじゃねーよ。」

「まったく、二人ともも、僕たちがいないとこでやってよね。」

それから数年、無事に祓魔師になり、獅郎の恋人になった私は、相変わらずみんなと修道院で、ワイワイ暮らしていた。
所構わず抱き着いてくる獅郎に毎回呆れたり、それに文句を言ってくる双子たちも変わらない。
ずっとこんな日々が続くと思っていた私は、あんな事が起こるなんて想像もしていなかった。







その日、私は親戚の結婚式で、少し遠出をしていた。
帰りは夜の10時をとっくに過ぎており、私の足は自然と早足になっていた。

「獅郎たち…ちゃんとご飯食べたかな…」

なんて独り言を言いながらも、無事に修道院に着くと、外から見ても明らかに様子がおかしくて、私は急いで中に入った。

中に入ると、燐が泣きながら佇んでいて、その横では、雪男や他の奴らがなにやらしゃがみこんでいる。
よく見ると、獅郎が血だらけで倒れていた。
私はすぐさま獅郎に駆け寄った。だが遅く、もう獅郎の心臓は動くことを放棄していた。

状況が呑み込めなくて、ただただ動かなくなった獅郎を見つめていると、周りにいた奴らが説明をしてくれた。でも私の耳にはそんな言葉なんて届かず、私の中には、獅郎がもうこの世にいないという現実だけが、虚しく残った。







雨の中、燐とメフィストが何か話していた。私は、ずっと獅郎の墓の前で、しゃがんで墓石をずっと見つめていた。
心の中で、答えなんて返ってこない質問をずっと繰り返していた。

(この中で…獅郎は寝てるの?…ねぇ、どうして私を置いていなくなったの?)







獅郎が死んで、1ヶ月は経った。燐は祓魔師になるために祓魔塾に行っている。

私は…

聖騎士だった獅郎が、
あんなに強かった獅郎が、
私の大好きな獅郎が、


死んだなんて信じられなくて、でも現実で、それは痛いくらいに私の胸に突き刺さって取れないでいる。



ねぇ獅郎、今でもね、


私の世界は止まったまま
(ずっとあの頃のまま)
(動けないで居るの…。)








青の祓魔師/藤本獅郎
青に落ちた日様へ提出。
いつか書きたいと思っていたので書けて満足。でも早足すぎた…。そして無駄に長かった…。

参加させていただきありがとうございました!


120326


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