兄さんの前で、幸せそうに微笑む貴女が、愛おしくて、憎らしかった。
彼女は僕よりふたつ年上で、同じ祓魔塾の同期だ。
僕にとって彼女は、良きライバルであり、理解者でもあり、かけがえのない存在だった。
そんな彼女と一緒に祓魔塾の教師になり、兄さんたちの面倒を一緒に見ていた。
その中で、彼女と生徒たちはどんどん打ち解けていった。
僕たちは、祓魔師としての任務や、祓魔塾の教師としての仕事もあり、次第に話す回数が減っていた。
そして、気がついた頃には、彼女の視線は兄さんに向いていた。
僕の方が、彼女と過ごした時間が長いのに、兄さんに取られたのが悔しかった。
同時に、やっぱり僕は兄さんには敵わないんだな、と哀しくなった。
そしてなにより、兄さんといるときの彼女の笑顔を思うと、その幸せを壊すような事は出来ないと思った。
「雪男、私、燐くんのこと好きになっちゃったんだ」
知ってるよ、好きだから
(…そっか。兄さんは鈍感だから、頑張ってね)
(うん、ありがと、雪男)
(彼女は本当に幸せそうな笑顔でそう言った。)
青の祓魔師/奥村雪男
主催している企画サイトに提出。
111207
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