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「あ。」
「あ…。」

また、会った。



恋愛エレベーター


会社員一年目、家は中々の金持ち。
そんな私は都内の高層マンションの最上階に住んでいる。
もちろんエレベーターで昇降するのだが、ここで一人暮らししてからそのエレベーターの中で、隣人のマキ兄ちゃんとよくばったり出会う。
マキ兄ちゃんは私の4つ上で、昔近所に住んでいたお兄ちゃんみたいな人で、大手のIT会社で働いているらしい。

そして私は、そんな彼に淡い恋心を抱いていた。


「こんばんは。」
「あ…えっと、こんばんはっ」

挨拶をされあわてて返すと、クスリと笑われてしまった。
恥ずかしくて俯けば、妙な沈黙が場を包んだ。
その沈黙に耐えきれなくて、私は思い切って彼に話しかけた。

「ねぇ、マキ兄ちゃんは今日も仕事帰り?」
「え?…あぁ。名前は違うのか?」
「いや、私はスーパー帰り。…なんだか最近よく会うね。」
「あぁ、そうだな。」

今日も普通に話せたことに心の中でガッツポーズを決めれば、もう最上階まで着いてしまった。

「それじゃ、また」
「あ、うん。えっと、お休みなさい。」
「あぁ、おやすみ。」

そう言って彼は颯爽と部屋に行ってしまった。
(やっぱり、私は年下だから女として見られてないのかな、)
そう思い落胆しながら自分も部屋へと戻った。


次の日、残業で遅くなった私は、エレベーターの前でため息をつきながら降りてくるのを待っていた。
(流石に、マキ兄ちゃんは、いないよね)
肩を落としていると、後ろから今まさに想像していた彼の声が聞こえた。

「名前?」
「え?…マキ兄ちゃん!どうして…」
「どうしてって…今日残業だったんだよ。…お前も?」
「う、うんっ…」
「そっか。なんか、あれだな。」
「…?」
「運命、みたいだな。」

その言葉に、驚いてバッと顔をあげれば、マキ兄ちゃんは私から顔を反らしながらも真っ赤になっていた。

(えっ、う、運命っ…て…、私…自惚れていいのかなっ…)

そんな考えを巡らせていると、チン、という音と共にエレベーターが到着した。
どちらともなく、エレベーターに乗り込み、しばらく沈黙が続く。
その沈黙を破ったのはマキ兄ちゃんだった。

「名前…」
「へっ!?あ、な、なにっ?」
「…俺は、名前の事が好きだ。」
「………えっ?」
「っだから、名前のことが好きなんだよ!一回で理解しろ!」
「う、うそっ…」
「こんな嘘なんか付くかアホ」

マキ兄ちゃんの言葉に、自然と頬に熱が集まる。
彼の顔を直視できなくて反らしていると、頬をむぎゅっと掴まれて、無理矢理彼の方に向かせられた。

「…お前は、どうなんだよっ…」
「…な、なにがですか」
「変なボケをかますな!…だから、お前は、俺のことどう思ってんだよ」
「っ…わたしも、マキ兄ちゃんが好きっ…」
「…そーか。…よかった。」

彼は安堵のため息をついて、私をぎゅっと抱き締めた。
私はといえば、突然抱き締められたせいで、心臓のドキドキが止まらなくなっていた。
でも、そのドキドキも、彼の腕の中も、恥ずかしいはずなのに、不思議と心地よかった。






灯崎様、リクエストありがとうございます!遅くなってすみません。
谷原甘夢ということで、こちらの独断で社会人パロにさせていただきました。
高層マンションのエレベーターだからこそ出来る恋ですよね(笑)

もし気に入らなかった場合書き直しますのでお申し付けください!
では、リクエストありがとうございました!


Title by HENCE様
111124


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