天使
「名前ちゃん!」
「なにー?」
「日本史の宿題を見せてください!!」
「…やだ」
「お願いしますー!」
(朝っぱらから大声で来たと思ったらそんなことか…)
そして今も必死に頭を下げる廉造を見て、加護欲、というのだろうか。そんな気持ちが湧いてきてしまった。
「仕方ないなぁ…はい、これ」
「ええの!?」
「うん」
「わー!おおきにな、名前ちゃん!大好き!」
「わっ…」
ついつい貸してしまえば、ぎゅうっと強く抱き締められた。
なんだか人前でこんなことをされるのもなんだか慣れてしまった。
「ホンマにおおきにな、名前ちゃんは天使や!」
「天使って…大袈裟だって。」
「いや、天使や!…めっちゃかわええ俺だけの天使ちゃんや。」
私の耳に唇を寄せ、何を言うかと思えば、甘ったるくて恥ずかしいセリフだった。
「ちょ、なに恥ずかしいこと言ってんのよ!」
「ホンマのこと言うただけやで〜。」
「…ばか!」
そう言いはなった瞬間、本鈴がなった。
廉造は少し寂しそうにした後、いつものようにへらっと笑い、ほなこれ借りてくな、と言って自分の席に戻っていった。
111006
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