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夜景



我ながらとてもくだらない喧嘩をしてしまった。
さすがにあれで怒って帰るなんて大人げなさすぎ、最悪だ。

そんなことを考えていたら、1日の半分以上を過ごしてしまった。
現在の時間、午後5時。
その時、携帯から着信を知らせるバイブがなった。
メールが入っていて確認すれば、志摩から、今から出てこれへんか?と一行だけ、絵文字も顔文字もなにも付いてないまま送られてきた。

ずっと寝間着のままだった私は、すぐに着替えて準備を始めた。
急いで家を出れば、玄関の前には志摩がいて、私を見て嬉しそうに笑った。

「名前ちゃん、」
「志摩っ…」

志摩にかけよろうと足を踏み出した瞬間、いつも通る家の前のくせに足をひっかけて転んでしまった。
でも、体に衝撃はなくて、代わりにふわりと温もりに包まれた。

「大丈夫?」
「あ…うん…」
「慌てすぎやで、別に急がんでもええのに。」
「つ、次から気を付ける…」
「ん」

志摩は頷いて私の頭を優しく撫でた。

「じゃあ行こか」
「どこいくの?」
「秘密。」



そう言って連れてこられたのは、学園町内にある高台の上だった。
西に傾いていた日はいつの間にか暮れていて、高台からの夜景は建物や街頭、車の灯りが辺り一面に散りばめられていて、とても幻想的だった。

「うわぁ…きれい…」
「綺麗やろ?これ、名前ちゃんに見せたかったんや。」
「へへ、ありがとう」
「…名前ちゃん、」
「なに?」
「昨日は、ごめんな?」

眉を下げて謝る志摩を、首を振って制す。

「謝らないで…悪いのは私だもん…ごめんね、」
「…じゃあ、…」

志摩はリップ音とともに私の唇に可愛らしいキスを落とした。

「これで仲直り、な?」
「…うん、ごめんね…廉造、」
「!…名前ちゃん…こっちこそごめんな?」
「んーん、」

私が"廉造"と呼べば、すごく嬉しそうに笑って抱き締めてきた。





111003


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