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最近、梓馬さんの帰りが遅いような気がする。
アンサンブルの練習がある、と聞いていたが、ここのところ毎日9時過ぎに帰ってくる。
毎日7時には帰っている私は、いつもご飯を作って梓馬さんを待っているのだった。




「ただいま」
「…お帰りなさい。」
「あぁ、名前。起きてたのか」
「…夜ご飯、食べますか?」
「いや、食べてきた…って…」

上着を脱ぎながらテーブルへ視線を移した梓馬さんは、驚いたような表情をした。
作って待ってるのなんて、いつものことなのに。

「…そうですか。じゃあ、私一人で、食べますね」
「俺のメール、見なかったのか?」
「メール?…あぁ、すみません、気付きませんでした。」

携帯を開けば、梓馬さんから「今日は夕飯いらないから、先に食べて、寝てて良いからね」とメールが入っていた。
これは気付かなかった私のせいだな、と思い、梓馬さんの分のご飯にラップをかけ、冷蔵庫にしまった。

「あ、名前…」
「大丈夫です。無理しないでください。…それより、疲れてるでしょう?もう、寝てて良いですよ?」
「……わかった。…おやすみ、名前。」
「おやすみなさい」

梓馬さんに気付かれないように、笑顔を作り、リビングの扉が閉まったと同時に、私はテーブルに突っ伏して静かに涙を流す。

(…なんだか、梓馬さんとうまくいかないな…。)

気が付けば泣き疲れたのか寝てしまい、朝日を浴び目が覚めれば朝食を作る時間だった。
少しボーッとしながら起き上がりキッチンへ向かい、いつものように朝食を作り始めた。




すれ違い
(些細なことですれ違った心は)
(不安が無かったあの頃を思い出す度)
(ズキズキと痛んだ。)






110929


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