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台風


(また雨かあ…、憂鬱だな)

9月に入ってから台風が多くなった。毎年そうだけど今年の台風は威力が半端じゃない。
土砂崩れとか、浸水とか、被害が絶大だとニュースで言っていた。

そんな台風は今、私たちの上空にいたりする。



「名前!」
「燐、どしたの?」
「多分警報で返されるって」
「まじかー…こん中帰るの嫌だなあ…」
「だよな」

燐とふたりで窓の外を見つめていると、教室の中がざわめき始めた。

「名前」
「あれ、メフィストだ」

どうやらいきなり理事長が入ってきて、その派手さにみんなが驚きの声をあげたらしい。

「名前、この雨の中帰るのは嫌でしょう?」
「うん」
「というわけで、私の車で送ってあげましょう」
「てか無限の鍵が良いんだけど」
「嫌です。"車で送る"というシチュエーションがいいんです!」
「アホか」

まあでも送ってもらえるのはとてもありがたいので、受けることにした。




「で、どうして他の皆さんも一緒なんです?」
「やって名前ちゃんと理事長二人きりにすんの嫌やし、名前ちゃんだけズルいやん!」
「まったく…名前さんだけ贔屓はやめたてくださいよフェレス興。」
「黙りなさいむさ苦しい男共。仕方ないから送って行きますが後で覚えてなさい!」
「「はーい!」」

というわけでみんなを乗せてメフィストの(運転手さんがちゃんと安全運転を心がけて)車は発進した。
動き出してすぐ出雲と(控えめに)しえみと(こちらも控えめに)朔子ちゃんが私の隣にいたメフィストと志摩を突き飛ばして隣に座ってきた。

「ちょっと、志摩と付き合ってるってホントなわけ!?」
「え、うん。」
「なんでよりによって志摩なわけ!?あいつよ?あのピンクよ!?」
「ちょ、出雲ちゃんえげつない…」

出雲がぎゃーぎゃー言っている横で、朔子ちゃんとしえみが心配そうに訪ねてきた。

「名前ちゃん、大丈夫?浮気とか、心配じゃない?」
「苗字さんがいいらいいんだけど…志摩くんって女の子大好きだから…」
「…んー…心配と言えば心配だけど、志摩だから何となく大丈夫な気がする。」
「名前ちゃんっ…」
「それにもし浮気なんかしたら思いっきりブッ飛ばすから大丈夫!」
「流石ね名前!」

志摩の顔が真っ青になったような気がするけどまぁいいや。


「うわ、雨脚強くなっとる。」
「これ、歩いとる人、辛いですよね」
「車に乗ってるとなんか罪悪感がありますよね」
「メフィスト、乗せてあげれば?」
「さすがにそんな人数無理です。」
「だっせ」
「仕方ないでしょう!」

窓の外に目をやり、歩いてる人を見ると、転びそうになっていたり、飛ばされそうな人もいた。

何となく心の中で歩いてる人に謝りながら、窓にかかっているカーテンを閉めた。






110929


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